乳がんと診断されてから、これまで経験したことのない不安や悩みを抱えることがあります。
家族や友人に話を聞いてもらうこともあるでしょう。
それだけでも、もちろん大切な支えです。
でも、ふとこんなふうに感じることはないでしょうか。
「同じ経験をした人は、こんな時どうしているんだろう」
「私の気持ちを、本当にわかってくれる人がいたらいいな」
「こんなことを話してもいいのかな」
乳がんを経験した人同士だからこそ、言葉にしやすいことがあります。
それが、同じような経験をした人同士が支え合う「ピアサポート」の大切なところなのかもしれません。
「同じ経験の人だから話せること」がある
乳がんの経験は、人それぞれです。
治療の内容も、感じる不安も、生活への影響も違います。
それでも、「乳がんを経験した」という共通点があることで、詳しく説明しなくても伝わる気持ちがあります。
たとえば、再発への不安。
治療中のつらさ。
「また検査が近づいてきた」ときの落ち着かない気持ち。
何気ない一言に傷ついてしまったこと。
何度も同じ不安を口にすると、自分でも「愚痴っぽくなっているかな」と思うことがあるかもしれません。
でも、同じ経験をした人となら、
「わかる」
「私もそうだった」
という一言だけで、気持ちが少し楽になることがあります。
乳がんは、身体のことだけではありません。
乳房を失ったことや、手術後の身体の変化。
髪が抜けたこと。
女性としての自分をどう受け止めていけばいいのか。
誰かのために頑張ってきた人ほど、自分自身のことを後回しにしてしまうこともあります。
そして、自分が治療を受けながらも、
「家族のことはどうしよう」
「子どもに心配をかけたくない」
「夫のことも気になる」
と、周りの人のことを心配している方も少なくありません。
そんな気持ちも、同じような経験をした人同士なら、言葉にしやすいことがあります。
家族や友人には話しにくい気持ち

家族がいるからこそ、話せないこともあります。
心配をかけたくない。
もう十分心配してもらっているから、これ以上は言えない。
友人から「元気そうでよかった」と言われて、笑顔で「ありがとう」と答えた。
でも、本当はまだ不安が残っている。
そんなこともあるかもしれません。
元気そうに見えることと、不安がないことは同じではありません。
治療が終わっても、気持ちまで一緒に元通りになるわけではありません。
だからこそ、いつも元気でいなくてもいい場所があることは大切だと思います。
「今日は少ししんどい」
「本当は怖い」
そんな気持ちも、そのまま話せる場所。
それが、同じ経験をした人とのつながりなのかもしれません。
病院では聞けない日常の悩み
診察の時間には、どうしても聞きたいことがたくさんあります。
でも、日常生活のちょっとした疑問までは聞く機会がなかったり、「こんなことを聞いてもいいのかな」と思ったりすることもあります。
たとえば、
食事はみんなどうしているの?
リンパ浮腫が心配なとき、どんなことに気をつけている?
運動はどのくらいしている?
乳房再建をした人は、どんなふうに感じている?
下着はどう選んでいる?
仕事への復帰はどうだった?
こうした疑問には、一つの正解があるわけではありません。
だからこそ、同じ経験をした人の話を聞くことで、
「そんな方法もあるんだ」
「私だけじゃなかったんだ」
と、自分なりの選択肢が増えることがあります。
もちろん、治療や身体に関する判断は、主治医や医療者に相談することが大切です。
そのうえで、経験者の話が日々の生活を考えるヒントになることもあります。
話すだけで、気持ちが軽くなることもある

身近に乳がんを経験した人がいない。
乳がんであることを、周りに話していない。
だからこそ、ここでしか話せない気持ちがある。
そんな方もいらっしゃいます。
誰かに答えを出してもらわなくてもいい。
ただ、「そうだったんだね」と聞いてもらうだけで、気持ちが少し軽くなることがあります。
自分の話をするだけではありません。
誰かの話を聞いて、
「私も頑張ってみよう」
と思えることもあります。
そして時には、自分の経験が、誰かの力になることもあります。
患者会は、泣いてばかりいる場所ではありません
「患者会」と聞くと、病気の話をして、つらい気持ちを打ち明ける場所を想像する方もいるかもしれません。
もちろん、不安や悲しみを話すことも大切です。
でも、それだけではありません。
実際に集まってみると、病気の話だけではなく、
好きなことの話。
仕事の話。
家族の話。
美容の話。
おいしいお店の話。
何気ない話で笑い合うこともあります。
「乳がん」という共通点で出会った人たちが、いつの間にか一人の女性として、お互いの人生や人柄に触れていく。
そんな時間も、患者会の大切な魅力だと思います。
泣くこともある。
笑うこともある。
そして、ときにはわいわいと楽しく過ごす。
そのどれもがあっていいのだと思います。
女性同士が支え合う「シスターフッド」

「シスターフッド」という言葉には、女性同士が立場や経験を分かち合いながら、支え合うという意味があります。
乳がんという経験をしたことは、一人ひとり違う人生の中で起こった出来事です。
それでも、その経験を通して出会った女性たちが、お互いの人生を尊重しながら支え合う。
「私だけじゃなかった」
と思えること。
「あなたも頑張っているんだね」
と励まされること。
そして、
「私の経験も、誰かの役に立つかもしれない」
と思えること。
そんなつながりが、つらい経験の中に新しい力を生み出してくれることがあります。
一人で抱えなくてもいい
乳がんの経験を、無理に誰かと共有する必要はありません。
一人で静かに過ごしたい時期もあります。
誰かと話したくなる時期もあります。
その時々で、必要な距離も違うでしょう。
でも、もし、
「同じ経験をした人と話してみたい」
そう思う日が来たら。
そんな時に、安心して行ける場所があること。
それだけでも、少し心強いのではないでしょうか。
誰かと比べる必要はありません。
無理に話す必要もありません。
聞いているだけでもいい。
笑っても、泣いてもいい。
女性同士が、お互いに「あなたはあなたのままでいい」と思えるような場所。
そんなつながりを、これからも大切にしていきたいと思っています。
治療のその先も、その人らしく。
そのために、身体を整えることだけではなく、人と人とのつながりが支えになることもある。
私は、そう感じています。
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