「抗がん剤のあとに、白血球を増やす注射を打つことになりました」
「注射って痛いのかな?」
「費用が高いって聞いたけど……」
乳がんの治療中、このような疑問を持つ方は少なくありません。
抗がん剤治療では、血液中の白血球、とくに好中球が減少することがあります。
そこで使われることがあるのが、G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)製剤です。
今回は、「白血球を増やす注射」と呼ばれることの多いG-CSF製剤について、患者さんが知っておきたいことをまとめます。
「白血球を増やす注射」って、どんな薬?

正確には、白血球全体を増やすというより、
感染から身体を守る「好中球」を増やす薬
と考えると分かりやすいでしょう。
代表的な薬には、
- フィルグラスチム
- ペグフィルグラスチム
などがあります。
G-CSFは、骨髄に働きかけて、好中球を作り、血液中へ送り出すのを助けます。
抗がん剤治療後に好中球が大きく減少すると、感染症にかかりやすくなります。
そのため、治療内容や患者さんの状態によって、好中球減少や発熱性好中球減少症(FN)を予防する目的で使用されます。
「白血球が下がってから打つ薬」ではないことも
ここは少し分かりにくいところです。
「白血球が減ったから、増やすために注射する」
と思っている方も多いのですが、G-CSFは必ずしも「減ってから使う」わけではありません。
抗がん剤の種類や治療計画から、
「この治療では好中球が大きく減る可能性がある」
と考えられる場合には、あらかじめ予防的に使用することがあります。
つまり、
白血球が減ってしまった後の「後追い」だけではなく、
白血球、とくに好中球が大きく減ることを防ぐために使うこともある。
ということです。
注射なの?
はい。
G-CSF製剤は注射で投与する薬です。
薬の種類によって投与方法や回数は異なります。
たとえばペグフィルグラスチムは、抗がん剤治療の翌日以降に皮下注射を1回行う方法が一般的です。
毎日何度も注射する必要がないタイプもあり、患者さんの負担を減らせるよう工夫されています。
「抗がん剤の翌日に、また病院へ行って注射?」
と疑問に思う方もいるかもしれません。
実際の投与方法やタイミングは、抗がん剤の種類や治療計画によって異なりますので、主治医や看護師に確認してくださいね。
副作用はあるの?
G-CSF製剤にも副作用があります。
比較的よく知られているのが、
骨の痛み、腰痛、関節痛、筋肉痛
などです。
「注射をしたあと、身体が痛くなった」
という方もいます。
これは、骨髄で血液細胞を作る働きが活発になることなどが関係すると考えられています。
そのほか、
- 発熱
- 頭痛
- 倦怠感
- 発疹
などがみられることがあります。
多くは一時的なものですが、気になる症状があるときは我慢せず、医療機関に相談しましょう。
「骨が痛い」ときは、どうしたらいい?
G-CSFを使った後に、
「腰が痛い」
「背中が痛い」
「骨がズキズキする」
という症状が出た場合には、自己判断で「抗がん剤の副作用だから仕方ない」と決めつけないことも大切です。
痛みが強い場合や、いつもと違う症状がある場合は、主治医に伝えてください。
痛み止めを使える場合もあります。
「薬を使っているから、鎮痛剤を飲んではいけないのでは?」
と遠慮してしまう方もいますが、治療中の薬との組み合わせを確認したうえで、使える鎮痛薬を医師や薬剤師が提案してくれることがあります。
費用が高いって本当?

ここも、気になるところですよね。
G-CSF製剤、とくにペグフィルグラスチムは、薬剤費そのものは比較的高額な薬です。
ただし、
「薬が高い=その金額をそのまま自分が支払う」
というわけではありません。
実際の自己負担額は、
- 健康保険の自己負担割合
- 所得区分
- その月にかかった治療費
- 高額療養費制度の対象になるか
などによって変わります。
治療費が気になる場合は、
「この注射をすると、自己負担はいくらくらいになりますか?」
と、病院の会計窓口や医療ソーシャルワーカーに聞いてみましょう。
「お金のことを聞いていいのかな……」
と思わなくて大丈夫です。
治療を続けるためには、医療費について知っておくことも大切な治療の一部です。
高い薬なら、使わないほうがいい?
そう思ってしまう方もいるかもしれません。
でも、G-CSF製剤は単に「白血球を増やすための薬」ではありません。
好中球が大きく減少すると、感染症のリスクが高くなります。
場合によっては、
- 発熱して受診が必要になる
- 入院が必要になる
- 抗菌薬などの治療が必要になる
- 次の抗がん剤治療を延期する
- 抗がん剤の量を調整する
といったことにつながる可能性があります。
そのため、治療による好中球減少のリスクと、G-CSFを使うメリットを考えて使用することになります。
「高いから使う・使わない」という単純な話ではなく、治療全体の中で必要性を判断する薬なのです。
「白血球が少ない」と言われたら、何に気をつける?
抗がん剤治療中は、血液検査で白血球数や好中球数を確認しながら治療を進めます。
好中球が少ない時期には、感染症に注意する必要があります。
たとえば、
- 発熱
- 寒気
- のどの痛み
- 咳
- 息苦しさ
- 排尿時の痛み
- 下痢などの消化器症状
など、いつもと違う症状があれば、医療機関に相談しましょう。
特に発熱した場合は、治療中の方では注意が必要です。
「熱が出たけれど、家で様子を見よう」
と自己判断せず、あらかじめ病院から説明されている連絡先や受診方法を確認しておきましょう。
治療中は「知らない」が不安につながることも
抗がん剤治療では、次から次へと新しい薬が出てきます。
「これは何の薬?」
「どうして必要なの?」
「副作用は?」
「費用はいくら?」
聞きたいことがたくさんあっても、診察室では緊張して聞けないこともありますよね。
でも、分からないまま治療を受けるより、
「この薬は何のためですか?」
「いつ打つ薬ですか?」
「どんな副作用に注意したらいいですか?」
「費用はどのくらいですか?」
と聞いてみるだけでも、少し安心できるかもしれません。
治療のための薬にも、「知っておく」ことが大切

抗がん剤は、がんを治療するための薬。
そして、その治療によって起こる可能性のある副作用を予防したり、軽くしたりするためにも、さまざまな薬が使われます。
G-CSF製剤も、そのひとつです。
「白血球を増やす注射」と聞くと、なんだか特別な薬のように感じるかもしれません。
でも、その目的を知ると、
「抗がん剤治療を安全に続けるために使われる薬なんだ」
と、少し見え方が変わるのではないでしょうか。
治療中は、分からないことがあって当然です。
遠慮せず、主治医や看護師、薬剤師に聞いてみてください。
知ることは、不安を小さくするためのひとつの方法です。
そして、治療を受けるあなたが、納得しながら治療を続けられることも大切にしてほしいと思います。
合わせて読みたい
抗がん剤治療では、白血球や好中球の減少だけでなく、吐き気や口内炎、疲れやすさなど、さまざまな副作用が起こることがあります。
治療中に「これって大丈夫?」と思ったときに、知っておいてほしいことをまとめています。
💊 抗がん剤の副作用について
抗がん剤の副作用、意外とイメージより軽いかも?
副作用を抑えるための薬も、抗がん剤治療と一緒に使われています。
🤢 吐き気が心配な方へ
抗がん剤の吐き気を抑える薬|治療と一緒に処方される薬について
吐き気止めなど、抗がん剤治療と一緒に使われる薬について解説しています。
👄 口内炎が気になる方へ
抗がん剤治療中の口内炎|予防と対処法
口の中の痛みや食事のつらさを少しでも減らすために、知っておきたいことをまとめました。
💰 治療費が心配な方へ
乳がん治療と「経済毒性」|治療費だけではない、お金の不安
治療費だけでなく、仕事や収入、生活費など、がん治療に伴う経済的な負担について考えます。
🌙 治療中、眠れない夜がある方へ
眠れない夜を、一人で抱え込まないで|乳がん治療と不眠・不安
治療中の不安や薬の影響などで、眠れない日が続くことがあります。一人で抱え込まないために知っておきたいことをまとめています。
治療中は、次から次へと新しい薬が出てきて、
「これは何の薬?」
「どうして必要なの?」
「副作用は大丈夫?」
と戸惑うこともあります。
分からないことは、分からないままで大丈夫。
ひとつずつ知っていくことで、治療への不安が少し軽くなることがあります。

前の記事

