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乳がん術後の弾性着衣(アームスリーブ)について|選び方・使い方・旅行時のポイント

乳がん術後の弾性着衣(アームスリーブ)について|選び方・使い方・旅行時のポイント

「リンパ浮腫が心配だから、アームスリーブを着けたほうがいいですか?」

「どんなものを選べばいいの?」

「一日中、着けていないといけないの?」

乳がんの治療後、そんな疑問を持つ方もいらっしゃいます。

「弾性着衣」と聞くと、少し難しく感じるかもしれません。

でも、弾性着衣は、リンパ浮腫のある方が日常生活を送るための大切なサポートのひとつです。

一方で、誰にでも同じものが必要なわけではありません。

リンパ浮腫の状態や身体の大きさ、生活スタイルなどによって、適したものは変わります。

この記事では、乳がん術後の「アームスリーブ」について、できるだけ分かりやすくお話しします。


弾性着衣(アームスリーブ)とは?

乳がん術後のリンパ浮腫に使用するアームスリーブ

弾性着衣とは、腕などを適度に圧迫することで、リンパ浮腫のむくみをコントロールするために使用する衣類です。

腕に着けるものを、一般に「アームスリーブ」と呼びます。

リンパ浮腫では、リンパ液がたまりやすくなっているため、圧迫によって余分な水分がたまるのを抑えたり、筋肉の動きによるポンプ作用を助けたりすることが期待されます。

リンパ浮腫についての詳細は、こちらの記事をご覧ください。

リンパ浮腫を『正しく恐れる』ということ|乳がん術後に知っておきたいリスクと向き合い方

弾性着衣には、腕全体を覆うタイプだけでなく、手の甲まで覆うものなど、さまざまな種類があります。

そのため、

「アームスリーブなら何でも同じ」ではありません。

身体の状態に合ったものを選ぶことが大切です。


どんなときに使うの?

弾性着衣は、主にリンパ浮腫の治療や、その状態を維持・管理するために使われます。

リンパ浮腫の治療では、圧迫療法が重要な役割を担っています。

たとえば、むくみを改善する段階では弾性包帯などを使い、状態が落ち着いたあとには弾性着衣を使って、むくみをコントロールしながら生活することがあります。

ただし、

「乳がんの手術をした人は、全員アームスリーブを着ける」

ということではありません。

また、

「リンパ浮腫にならないために、自己判断でずっと着けておく」

というものでもありません。

必要かどうか、どのようなものが適しているかは、身体の状態を確認したうえで考えることが大切です。


弾性着衣には、いろいろな種類があります

乳がん術後のリンパ浮腫に使用するアームスリーブ

弾性着衣には、さまざまな違いがあります。

たとえば、

  • サイズ
  • 長さ
  • 圧迫の強さ
  • 素材
  • 編み方
  • 手の部分まで覆うかどうか
  • 既製品かオーダーメイドか

などです。

リンパ浮腫の程度や腕の形、皮膚の状態、筋力や動かしやすさなどによって、適したものが異なります。

だからこそ、

「ネットで見つけたから、これを買おう」

と簡単に決めるのではなく、必要に応じて医療者に相談することが大切です。

生活や肌の状態に合わせて選ぶことも大切です

弾性着衣は、圧迫の強さやサイズだけでなく、素材や形、使う時間帯などにも違いがあります。

だからこそ、その方の身体だけでなく、生活に合ったものを選ぶことも大切です。

肌が敏感な方は、素材にも注目して

肌が敏感な方や、治療後に皮膚の状態が気になる方は、素材や縫い目(リブの有無)、肌への刺激などにも配慮して選びましょう。

医療用として設計された弾性着衣には、肌への負担に配慮された製品もあります。

「着けるとかゆくなる」
「赤くなる」
「痛みがある」

などの症状がある場合は、我慢して使い続けず、医療者に相談してください。

夜間用の弾性着衣もあります

弾性着衣には、夜間に使用することを想定した、比較的圧の弱い製品もあります。

日中に使用するものとは、目的や構造が異なる場合があります。

ただし、夜間に弾性着衣を着ける必要があるかどうかは、リンパ浮腫の状態によって異なります。

「夜も着けたほうがいいのかな?」と思ったときは、自己判断せず、主治医やリンパ浮腫について知識のある医療者に相談しましょう。

日差しが気になる季節にも

日差しから腕を守るアームスリーブを着用した女性

アームスリーブで腕を覆うことで、半袖の服を着るときなどに、日差しから腕を守るカバーとして役立つ場合もあります。

ただし、すべてのアームスリーブに紫外線防護機能があるわけではありません。

日焼け対策を目的として使用する場合は、製品にUVカット機能があるか確認することをおすすめします。

弾性着衣を「治療のためだけのもの」と考えるのではなく、

「自分の生活の中で、どう使いやすくするか」

という視点で選ぶことも大切です。


「サイズが合っていれば大丈夫」でもありません

アームスリーブは、ただ腕を締めればよいというものではありません。

適切な圧迫が、適切な場所にかかることが重要です。

そのためには、身体に合ったサイズを選ぶ必要があります。

サイズが合っていないと、

  • ずれやすい
  • しわができる
  • 食い込みが気になる
  • 装着しにくい
  • 着けていることがつらくなる

といった問題につながることがあります。

リンパ浮腫の圧迫療法では、製品の選択を含めて、本人の状態をきちんと評価することが重要とされています。


自分で適当に選ばないことも大切です

最近は、弾性着衣もインターネットなどで購入できるようになりました。

便利になった一方で、

「とりあえずアームスリーブを買ってみよう」

と自己判断してしまうことには注意が必要です。

リンパ浮腫の状態や、どこにどの程度むくみがあるのかによって、必要な圧迫や形状は変わります。

また、皮膚に傷がある場合や、痛み・しびれなどがある場合には、使用について医療者に相談したほうがよいこともあります。

「着ければ安心」ではなく、「自分に合ったものを適切に使う」ことが大切です。


はんなりでは、主治医の指示書をもとにご案内しています

はんなりでは、リンパ浮腫のケアに必要な方へ、主治医の指示書をもとにアームスリーブをご案内しています。

取り扱っているのは、九州メディカルサービスのアームスリーブです。

ただ商品をお渡しするのではなく、まず身体の状態を確認します。

そして、アームスリーブを選ぶために必要な部位をきちんと計測します。


「数字よりも生活を見る。でも、必要なところはきちんと測る」

私は普段、身体のことを数字だけで判断することは大切ではないと思っています。

たとえば、

「腕が何cmだからこう」

「肩が何度動くからこう」

数字だけでは、その方が実際の生活で何に困っているのかまでは分からないからです。

でも、弾性着衣を選ぶときは違います。

必要なところは、きちんと測ります。

アームスリーブは、その方の腕に合ったサイズや形を選ぶことが大切だからです。

つまり、

数字を見ることが目的なのではなく、その方の身体に合ったものを選ぶために測る。

これが、はんなりの考え方です。

そして、見るのは腕のサイズだけではありません。

「どんな仕事をしているのか」

「普段どんな服を着ているのか」

「旅行に行くことがあるのか」

「長時間の外出はあるのか」

「自分で着けたり脱いだりできるのか」

そんなことも大切にしています。


アームスリーブの装着は、最初が大切

アームスリーブは、正しく装着することも大切です。

基本的には、製品の説明書や医療者からの指導に従って使用します。

装着するときには、

  • 爪や指輪などで生地を傷つけない
  • ねじれがないようにする
  • しわを作らない
  • 一部分だけが強く食い込まないようにする
  • 装着後に違和感がないか確認する

などに注意します。

「引っ張って着ける」というより、少しずつ位置を整えながら、腕全体に均等にフィットさせていくイメージです。

製品によって装着方法が異なるため、購入した製品の説明に従うことが基本です。


「ずっと着けていないといけないの?」

これもよく聞かれる質問です。

答えは、

「全員が一日中、同じように着けなければならない」というわけではありません。

リンパ浮腫の状態や治療の段階、活動量などによって、使用する時間や場面は異なります。

医療者から指示されている場合は、その指示に従いましょう。

また、

「着けていると苦しい」

「ずれてしまう」

「暑くて続けられない」

など、困っていることがあれば我慢せずに相談してください。

弾性着衣は、生活の中で無理なく続けられることも大切です。


夏は暑い……どうしたらいい?

夏になると、

「暑くてアームスリーブを着けるのがつらい」

という方もいらっしゃいます。

汗をかいたまま長時間着用すると、皮膚のトラブルにつながることもあります。

そのため、

  • 汗をかいたら皮膚を清潔にする
  • 皮膚の状態を確認する
  • 洗い替えを用意する
  • 使用後は製品のお手入れをする
  • 無理に我慢せず、困ったときは相談する

など、続けやすい工夫をしてみましょう。

製品によって洗濯方法や乾燥方法が異なるため、必ず製品の取り扱い表示を確認してください。


旅行のときはどうする?

飛行機で海外旅行のイメージ

「アームスリーブを使っているから、旅行はできませんか?」

そんなことはありません。

リンパ浮腫があっても、状態に合わせて旅行を楽しんでいる方はたくさんいらっしゃいます。

旅行のときは、

  • アームスリーブを忘れない
  • 洗い替えを準備する
  • 長時間同じ姿勢を続けない
  • こまめに身体を動かす
  • いつもと違うむくみや張りがないか確認する

など、自分の身体に合わせて準備しておくと安心です。

そして、

「旅行だから特別なことをしなければいけない」

と考えすぎる必要もありません。

普段のケアを、できる範囲で続けていきましょう。

乳がん術後の旅行については、こちらの記事でも詳しくご紹介しています。

乳がん術後でも温泉旅行を楽しもう|入浴着という選択肢があります


飛行機に乗るときは?

長時間の飛行機では、同じ姿勢で座っている時間が長くなります。

そのため、リンパ浮腫がある方は、移動中も身体をこまめに動かすことを意識してみましょう。

たとえば、

  • ときどき座席を離れて歩く
  • 肩や肘、手首をゆっくり動かす
  • 同じ姿勢を長く続けない
  • 適度に水分をとる

などです。

弾性着衣を飛行機の中で使用するかどうかについては、リンパ浮腫の状態や普段の使用方法によっても異なります。

すでに弾性着衣を使用している方は、旅行前に主治医やリンパ浮腫について相談できる医療者に確認しておくと安心です。


弾性着衣は「生活を制限するため」のものではありません

弾性着衣を使い始めると、

「これからずっと着けなくてはいけない」

「好きな服が着られない」

「旅行にも行けない」

そんなふうに感じてしまう方もいるかもしれません。

でも、弾性着衣は、

あなたの生活を小さくするためのものではありません。

リンパ浮腫の状態を管理しながら、

仕事をする。

家事をする。

旅行をする。

好きなことを楽しむ。

そのためのサポートのひとつです。

だからこそ、

「どうすれば自分の生活の中で無理なく使えるか」

を考えることが大切だと思っています。

▶リンパ浮腫が心配。腕は使わないほうがいい?|乳がん術後の運動と暮らし方


「必要なものを、必要なときに」

乳がんの治療を受けたからといって、すべての方に弾性着衣が必要なわけではありません。

また、リンパ浮腫がある方でも、状態によって必要なケアは異なります。

だから、

「みんなが着けているから」

「ネットでおすすめされていたから」

ではなく、

自分の身体に今、何が必要なのか。

そこから考えてほしいと思っています。


はんなりでは、身体だけでなく「その人の生活」を見ています

アームスリーブ選びのためカウンセリングする理学療法士

はんなりでは、乳がん治療後の身体のケアを行っています。

弾性着衣をご案内するときも、

ただ腕のサイズを測って終わり、ではありません。

どんな生活をしているのか。

何に困っているのか。

仕事ではどんな動きをするのか。

旅行を楽しみたいのか。

どんな服を着たいのか。

自分で装着できるのか。

そんなことまでお聞きしながら、その方に合った方法を一緒に考えていきます。

必要なところは、きちんと測る。

でも、

見るのは数字だけではない。

身体と生活、その両方を大切にする。

それが、はんなりの考えるケアです。


弾性着衣と上手につき合いながら、自分らしい毎日を

アームスリーブは、初めて見ると少し特殊なものに感じるかもしれません。

「これを着けて生活するの?」

と不安になる方もいらっしゃるでしょう。

でも、身体に合ったものを選び、正しく使い、生活の中に少しずつ取り入れていくことで、リンパ浮腫と付き合いながら仕事や旅行などを楽しんでいる方もいます。

大切なのは、

弾性着衣に生活を合わせるのではなく、
自分の生活に合う使い方を一緒に見つけていくこと。

そして、困ったときには一人で抱え込まないこと。

はんなりでは、

「治療が終わったあとも、一人じゃない。」

そんな気持ちで、乳がん治療後の身体と暮らしに寄り添っています。


※この記事は、乳がん治療後の弾性着衣について一般的な情報をお伝えするものです。弾性着衣の必要性、種類、圧迫の強さ、使用時間などは、リンパ浮腫の状態や治療内容によって異なります。使用を検討される場合は、主治医やリンパ浮腫について知識のある医療者にご相談ください。また、はんなりでのアームスリーブのご案内は、主治医の指示書をもとに行っています。

中野 郁子

この記事を書いた人中野 郁子(なかの いくこ)

乳がん女性の駆け込み寺 はんなりを運営しています。
母をがんで亡くした後、がん患者さんとその家族を支える仕事がしたいと転職。
久留米市の病院に勤務後、2016年に開業しました。
理学療法士、アロマセラピスト、ピンクリボンアドバイザー、乳がん啓発運動指導士の資格があります。

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