「もうすぐ仕事に復帰します。」
サロンでは、そんなご相談を受けることがよくあります。
治療がひと区切りつき、少しずつ日常生活に戻れることは、とても喜ばしいことです。
でも、その一方で、
「以前のように働けるだろうか。」
「仕事を始めたら、また痛みが出ないかな。」
そんな不安を抱えながら復職の日を迎える方も少なくありません。
乳がん術後の復職は、身体だけでなく心にも大きな変化を伴います。
安心して仕事復帰を迎えるためには、復職前から少しずつ身体を整えておくことが大切です。
今日は、安心して仕事に復帰するために、復職前から取り入れていただきたい身体の準備についてお話しします。
復職前に始めたいセルフケア|安心して仕事に戻るために
この記事では、乳がん術後に仕事へ復帰する前に知っておきたい身体の準備や、肩や腕のセルフケア、疲労との付き合い方、リンパ浮腫予防のポイントを理学療法士の視点からご紹介します。
復職への不安を少しでも軽くし、自分らしく働き続けるためのヒントとしてお役立てください。
「治療が終わった」と「身体が元に戻った」は同じではありません
手術や放射線治療、抗がん剤治療が終わると、
「治療は終わりましたね。」
と言われることがあります。
もちろん、それは大きな一区切りです。
でも、身体はまだ回復の途中です。
脇や胸のつっぱり。
腕の動かしにくさ。
疲れやすさ。
手足のしびれ。
こうした症状は、仕事が始まってから改めて気付くこともあります。
だからこそ、復職前には「働ける身体づくり」を少しずつ始めておくことが大切です。

① 肩と腕を毎日やさしく動かしましょう
デスクワークでも、立ち仕事でも、肩や腕は想像以上によく使います。
「痛いから動かさない。」
これを続けてしまうと、肩や胸まわりが硬くなり、さらに動きにくくなることがあります。
おすすめなのは、
肩と腕を、
肩甲骨ごと、
無理のない範囲で、
ゆっくり、
気持ちよく動かすこと。
大きく一度に長時間動かすことよりも、「少しづつ毎日続けること」が何より大切です。

② 疲れをため込まない習慣をつくりましょう
復職すると、
「久しぶりだから頑張ろう。」
という気持ちになりがちです。
でも、身体は治療前とは少し違います。
帰宅後にぐったりしてしまう日もあるでしょう。
そんな日は、
「今日は疲れたからダメだった。」
ではなく、
「今日はよく頑張ったね。」
と、自分に声をかけてあげてください。
仕事を続けるためには、頑張る時間だけでなく、しっかり休んで回復する時間も必要です。
③ リンパ浮腫を予防するために
リンパ節を切除した方や放射線治療を受けた方は、リンパ浮腫に気をつける必要があります。
だからといって、「腕を使ってはいけない」というわけではありません。
大切なのは、腕に負担をかけすぎず、リンパの流れを妨げない生活を心がけることです。
例えば、
・手術した側で重い荷物を持たない
・同じ動作や姿勢を長時間続けない
・腕が重い、張る、むくむと感じたら早めに休む
特にデスクワークの方は、パソコン作業に集中すると、肩がすくみ、首や肩、腕の筋肉が緊張したままになり、血液やリンパの流れが滞りやすくなります。
30〜60分に一度は立ち上がって歩いたり、肩を軽く回したり、姿勢を変えたりしてみましょう。

お茶を飲みに立ったりするだけでも十分です。
「少し動く」ことを習慣にするだけで、身体への負担は大きく変わります。
また、足元を冷やさないことも大切です。
冷えによって足元の筋肉が硬くなったり、長時間座りっぱなしで下半身を動かさなかったりすると、全身の血液やリンパの循環が低下しやすくなります。
血液やリンパは、筋肉が動くことで流れを助けられています。
そのため、足元が冷えて動きが少なくなると、全身の巡りにも影響し、肩や首のこわばり、腕の重だるさを感じやすくなることがあります。
デスクワークの合間に足首を動かしたり、ふくらはぎを軽く動かしたりすることは、「第二の心臓」と呼ばれるふくらはぎの働きを助け、全身の循環を促します。
夏場の冷房や冬の底冷えなど、意外と足元は冷えやすいものです。
靴下を履いたり、ひざ掛けを使ったりして、足元を冷やしすぎないよう心がけましょう。
そして毎日、自分の腕を見て、触れて、
「今日はいつもと変わらないかな。」
と確認する習慣も、リンパ浮腫の早期発見につながります。
身体は一つにつながっています。
肩だけ、腕だけを見るのではなく、足元から全身の巡りを整えることも、乳がん術後の身体をいたわる大切なセルフケアです。
身体の声を聞くこともセルフケア
復職すると、仕事に集中するあまり、自分の身体の変化に気付きにくくなることがあります。
だからこそ、
肩は動きにくくなっていないかな。
左右の腕の太さが違わないかな。
疲れがたまっていないかな。
そんなふうに、一日の終わりに自分の身体に目を向ける時間をつくってみてください。
身体は、いつも小さなサインを送ってくれています。
そのサインに早く気付くことが、不調を長引かせないための第一歩です。
はんなりからお伝えしたいこと
乳がん術後の仕事復帰は、人それぞれのペースがあります。
復職前から身体を整え、自分に合ったセルフケアを続けることが、長く安心して働き続けることにつながります。
それでも、復職したら大変なことが多いと思います。
サロンには、
「復職したら肩が痛くなった。」
「仕事を始めたら腕が重だるくなってきた。」
「元気そうと言われるけれど、本当は毎日精一杯。」
そんなお気持ちを抱えて来られる方も少なくありません。
辛い時は、辛いと言っていい。
多くの方は、「もっと頑張らなければ」と思っています。
でも、本当に必要なのは、頑張ることではありません。
頑張り続けられる身体を整えること。
そして、
疲れたときには、安心して休める自分でいること。
乳がんの治療後の身体は、一人ひとり違います。
だからこそ、誰かと比べるのではなく、「昨日の自分」と比べながら、少しずつ身体を整えていけば十分です。
仕事も、暮らしも、趣味も、大切な人との時間も。
そのすべてを、その人らしく続けられるように。
理学療法士として、私は身体だけではなく、その方の暮らし全体に寄り添い、一緒に歩んでいきたいと思っています。
それが、「はんなり」が皆さまにお届けしたいケアです。


前の記事