球体模様
はんなりについて

乳がんのことを、また一から説明するのがつらいとき

乳がんのことを、また一から説明するのがつらいとき

先日、お客様とお話ししていて、こんなことを聞きました。

整体やリラクゼーションサロンに行くと、最初にカウンセリングシートを書くことがあります。

「これまでにかかった病気」
「手術歴」
「現在治療中の病気」

そんな欄を前にすると、

「乳がんって書くのが、嫌なんです」

と。

その気持ちを聞いて、改めて考えさせられました。

病歴を書くことは、ただの「情報記入」ではない

施術する側にとって、病歴や手術歴を確認することは、安全に施術するために必要なことです。

でも、書く側にとっては、それだけではありません。

「乳がん」と書けば、

どんな手術をしたのか。
いつ治療したのか。
今も治療中なのか。

そこからさらに聞かれるかもしれません。

自分から話したいと思っているわけではないのに、施術を受けるために病気のことを説明しなければならない。

それを負担に感じる方がいても、不思議ではないと思います。

特に男性スタッフには話しにくいこともある

そのお客様は、

「特に男性のスタッフには話したくない」

ともおっしゃっていました。

整体やリラクゼーションサロンのカウンセリングシートを記入する女性

もちろん、男性の施術者だから理解できないということではありません。

知識を持ち、丁寧に対応されている方もたくさんいらっしゃると思います。

それでも、

乳房の手術のこと。
傷あとや胸の違和感。
脇のつっぱり。
下着のこと。
ホルモン療法による身体の変化。

こうしたことを異性に話すこと自体に、抵抗を感じる女性もいます。

これは知識の問題だけではなく、「誰になら安心して話せるか」という、とても個人的な感覚なのだと思います。

「話しても分かってもらえないかも」と思うと、説明するのも疲れる

乳がんの治療は、一人ひとり違います。

乳房温存術なのか、全摘なのか。
リンパ節の手術をしているのか。
乳房再建をしているのか。
放射線治療を受けたのか。
抗がん剤やホルモン療法を受けているのか。

そして治療が終わったあとにも、

肩が動かしにくい。
脇がつっぱる。
腕が重い。
傷の周りに違和感がある。
リンパ浮腫が心配。
患側を下にして寝るのが怖い。

そんな悩みが残ることがあります。

ところが、それを知らない人に説明しようとすると、

「どこから説明したらいいんだろう」

となってしまうことがあります。

ただ身体をほぐしてもらいたいだけなのに、また病気の説明から始めなければならない。

「話しても分かってもらえないかもしれない」

と思えば、なおさら話しにくくなるでしょう。

乳がんの治療後、実際にはどんな身体の悩みを抱えている方が多いのでしょうか。はんなりに来られた方のお悩みをまとめています。

→ 「乳がん手術後、みんな何に悩んでいる?来店理由を理学療法士が解説」

「一から説明しなくても分かってもらえる」という安心

はんなりは、乳がん術後のケアを専門に行っているサロンです。

私は理学療法士として病院勤務時代から乳がん術後のリハビリテーションに携わり、現在も乳がんを経験された女性の身体のケアを続けています。

だから、

「全摘です」
「腋窩リンパ節郭清をしています」
「放射線治療が終わりました」
「今、ホルモン療法中です」
「再建しています」

とお聞きすれば、そこから身体にどのようなことが起こりやすいのかを考えながらお話を伺うことができます。

もちろん、同じ治療を受けても身体の状態や感じ方は一人ひとり違います。

ですから、決めつけることはしません。

でも、乳がんについて一から全部説明しなくても話が通じる。

それだけでも、少し気持ちが楽になることがあるのだと思います。

何度も通ってくださる方は、毎回一から話さなくても大丈夫

施術前にその日の体調について女性セラピストと話す女性

はんなりに何度も来てくださっているお客様の場合は、これまでの治療歴や身体の状態など、基本的なことはすでに分かっています。

ですから毎回、病気の経緯を一から話していただく必要はありません。

「今日は肩が少し重いです」

「前回より腕は楽になりました」

「最近、夜になると少しむくむ気がします」

そんなふうに、その日の体調や前回からの変化、今困っていることを確認しながら、その日の施術を考えていきます。

病気について何度も説明する場所ではなく、これまでの経過を知っている人に、今の自分のことを話せる場所。

長く関わらせていただけるサロンだからこその安心感もあるのかもしれません。

病院で乳がん術後のリハビリに携わっていた私が、なぜ病院を辞めて「はんなり」を始めたのか。その理由については、こちらの記事に書いています。

→ 「理学療法士の私が病院を辞めて独立した理由」

普段は、病気とは関係のない話をたくさんしています

リラクゼーションサロンで女性セラピストと会話を楽しむ女性

そして実際の施術中は、乳がんの話ばかりをしているわけではありません。

長く通ってくださっている気心の知れたお客様とは、むしろ女同士の気軽なおしゃべりを楽しんでいることのほうが多いかもしれません。

「この前食べたあれ、美味しかったよ」

「最近、このドラマ見てる?」

「この映画、よかったよ」

そんな話から、推し活などの趣味のこと、旅行のこと、家族のこと、お子さんやお孫さんの成長のことまで。

話題はいろいろです。

一緒に笑ったり、ときには愚痴をこぼしたり。

そんな時間も、はんなりで過ごす時間の一部になっています。

ここでは、ずっと「乳がん患者」でいなくていい

乳がんを経験したからといって、その人のすべてが「乳がん」になるわけではありません。

一人の女性として、仕事をしたり、家族と過ごしたり、美味しいものを食べたり、好きな人や好きなものに夢中になったり。

病気とは関係のない毎日のほうが、ずっと長いはずです。

だから、はんなりに来たときも、

話したい日は、乳がんのことを話していい。

身体のことだけ相談したい日があってもいい。

今日は病気の話なんてしたくない、という日があってもいい。

身体のことは分かってもらえる。
でも、ずっと「患者さん」でいなくてもいい。

そんな距離感で過ごしていただけたらと思っています。

身体を「治してもらう」だけではなく、その人が自分の生活を取り戻していくことを支えたい。
10年間、お客様とどのように過ごしてきたのか、そしてこれからも大切にしたいことを書いています。

→ 「10年間、ありがとうございます|これからも女性の人生に寄り添う場所でありたい」

気兼ねなく話せる場所でありたい

今回、お客様から、

「ここは専門だから、気兼ねなく話せる。分かってもらえるからいい」

と言っていただきました。

とても嬉しい言葉でした。

専門的な知識を持っていることは、もちろん大切です。

でも、それと同じくらい、

「こんなことを言っても大丈夫かな」

「分かってもらえるかな」

と心配せずにいられることも、大切なのかもしれません。

話したくないことは、無理に話さなくていい。

話したいことがあるときには、気兼ねなく話せる。

身体のことは、必要なところをきちんと理解してもらえる。

そして、それ以外の時間は、一人の女性として気楽に過ごせる。

はんなりが、そんな場所であり続けたいと思っています。

合わせて読みたい

乳がんの治療が終わっても、身体や心の悩みがすべてなくなるわけではありません。

はんなりが、乳がんを経験した女性とどのように関わってきたのか。よかったら、こちらの記事も読んでみてください。

中野 郁子

この記事を書いた人中野 郁子(なかの いくこ)

乳がん女性の駆け込み寺 はんなりを運営しています。
母をがんで亡くした後、がん患者さんとその家族を支える仕事がしたいと転職。
久留米市の病院に勤務後、2016年に開業しました。
理学療法士、アロマセラピスト、ピンクリボンアドバイザー、乳がん啓発運動指導士の資格があります。

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