「食べることが好きだったのに、最近は食事が楽しみじゃない」
がんの治療中、そんな変化を感じることがあります。
味がいつもと違って感じる。
好きだったものがおいしく感じられない。
食べると吐き気がする。
口内炎が痛くて、食べることがつらい。
食事は、体に栄養を届けるだけではありません。
家族と食卓を囲んだり、友人とランチをしたり、旅行先でおいしいものを食べたり。
私たちの毎日の中には、「食べること」と結びついた小さな楽しみがたくさんあります。
だからこそ、治療によって食事が楽しめなくなることは、身体だけでなく、心にも影響することがあります。
この記事では、がん治療中に起こることがある味覚の変化、吐き気、口内炎について、少しでも食事を楽に、そして自分らしく楽しむための工夫をご紹介します。
がん治療中、味覚や食欲が変わることがあります
がんの治療中には、味やにおいの感じ方が変化することがあります。
「味が薄く感じる」
「苦味や金属のような味がする」
「今まで好きだったものが、おいしく感じない」
「料理のにおいがつらい」
など、その感じ方は人によってさまざまです。
薬物療法では、使用する薬によって味覚の変化が起こることがあります。また、放射線治療でも、照射する部位によっては味覚やにおいに変化が起こることがあります。
さらに、口の中の乾燥や感染、口腔内の状態なども味覚に影響することがあります。
そのため、「治療のせいだから仕方がない」と我慢するだけではなく、症状に合わせて食べ方を工夫することが大切です。
味覚の変化があるときは、「味付け」を工夫してみる

味が感じにくくなったときは、ただ塩分を増やすのではなく、うま味や風味を利用する方法があります。
たとえば、
- 昆布やかつお節、干ししいたけなどのだしを使う
- マヨネーズやチーズ、バターなどで風味を加える
- 食べやすければ、少し酸味を取り入れてみる
- 香りの強すぎない薬味などを試してみる
などです。
ただし、酸味のあるものは、口内炎があるとしみることがあります。
「味覚の変化があるから、この食べ物が正解」というものではありません。
今の自分がおいしいと感じるものを探してみる。
それくらいの気持ちで大丈夫です。
「金属のような味」がするときは
塩味を苦味や金属のように感じることがあります。
その場合は、だしをきかせて塩味を控えめにしたり、マヨネーズなどを使ったりすると、食べやすくなることがあります。
いろいろ試してみて、
「これなら食べられる」
という方法を見つけてみましょう。
食べる温度を変えてみる

温度を変えるだけで、食べやすくなることがあります。
味覚の変化がある場合には、人肌程度の温度が味を感じやすいことがあります。
一方、吐き気があるときは、温かい料理のにおいがつらく感じることもあります。
その場合は、
- 少し冷ましてから食べる
- 冷たい麺類を試す
- ゼリーやプリンなど、口当たりのよいものを選ぶ
- 冷ややっこなど、においの少ないものを試す
なども一つの方法です。
「温かいものを食べなければ」と決めつけず、自分が一番食べやすい温度を探してみることが大切です。
吐き気があるときは、少量ずつ

吐き気があるときに、一度にたくさん食べようとすると、さらに気持ち悪くなってしまうことがあります。
そんなときは、
少量を何回かに分ける
という方法があります。
お茶碗いっぱいのご飯を無理に食べるのではなく、
「少し食べて、休む」
という食べ方でも構いません。
おかゆややわらかい麺、やわらかく煮た野菜など、消化のよいものが食べやすいこともあります。
また、吐き気があるときは、においがきっかけになることもあります。
料理のにおいがつらい場合には、換気をしたり、温かい料理を少し冷ましたり、冷たい料理を選んだりすることで、においを減らせることがあります。
口内炎があるときは、「刺激しない」ことを大切に
がんの治療中には、口内炎や口の中の乾燥が起こることがあります。
口内炎ができると、
「食べたいけれど、しみて痛い」
ということがあります。
そんなときは、
- 熱いものを避ける
- 酸味の強いものを控える
- 香辛料など刺激の強いものを控える
- 薄味にする
- やわらかく煮る
- 細かく刻む
- とろみをつける
- 水分が多く、口当たりのよいものを選ぶ
などの工夫があります。
食べ物や飲み物は、人肌程度まで冷ましてから食べると刺激を減らせることがあります。
ただし、口内炎の状態によって食べやすいものは違います。
「健康のためにこれを食べなければ」と無理をするより、今の口の状態で食べられるものを選ぶことも大切です。
亜鉛は味覚にも関係しています
味覚の変化について調べていると、「亜鉛」という栄養素を目にすることがあるかもしれません。
亜鉛は味覚に関係する栄養素の一つで、亜鉛や鉄の状態が味覚の変化に関係することがあります。
ただし、がん治療中の味覚の変化がすべて「亜鉛不足」が原因というわけではありません。
薬物療法の影響や口腔内の乾燥、感染など、さまざまな原因が考えられます。
そのため、
「味覚がおかしいから、亜鉛のサプリメントを飲もう」
と自己判断するのではなく、症状が気になる場合は主治医や管理栄養士などに相談しましょう。
必要に応じて、医師の判断で亜鉛製剤などが使われることもあります。
「ちゃんと食べなければ」と頑張りすぎなくても大丈夫
がん治療中は、栄養をとることも大切です。
でも、
「ちゃんと食べなければ」
「バランスよく食べなければ」
「以前と同じように食べなければ」
と頑張りすぎることで、食事そのものがつらくなってしまうこともあります。
国立がん研究センターも、食事について特別な指示がない場合には、体調やおなかの具合に合わせて、食べられるものから食べることを勧めています。食べることを楽しめるように、外食や盛り付けなどを工夫することも紹介されています。
治療中は、毎日同じように食べられなくても大丈夫です。
食べられるときに、食べられるものを、少しずつ。
それも一つの大切な方法です。
食事が楽しめないときは、「食事以外の楽しみ」も大切

もし今、食べることが楽しめなくなっているなら、
「楽しみがなくなってしまった」
と感じることがあるかもしれません。
そんなときは、無理に「食べる楽しみ」を取り戻そうとしなくても大丈夫です。
好きな音楽を聴く。
好きな本を読む。
季節の花を見る。
誰かとゆっくり話す。
お気に入りの香りを楽しむ。
少し外の空気を吸う。
そんな小さなことでいいのです。
治療中も、あなたの毎日は続いています。
治療だけが、あなたの人生ではありません。
食事が難しい時期だからこそ、食事以外にも「今日の小さな楽しみ」を残しておいてください。
つらい症状は、一人で我慢しないでください
味覚の変化、吐き気、口内炎などによって食事が十分にとれない状態が続くと、水分や栄養が不足することがあります。
特に、
- 水分がとれない
- 食事がほとんどとれない
- 嘔吐が続いている
- 体重が減ってきた
- 口内炎が痛くて食べられない
- 飲み込みにくい、むせる
- 症状が強く日常生活に支障がある
という場合は、我慢せずに主治医や看護師、薬剤師、管理栄養士などに相談してください。
口内炎については、担当医だけでなく歯科医師に相談できる場合もあります。症状が強い場合には、薬による痛みのコントロールや栄養補助食品などが検討されることもあります。
「食べられない」ことも、あなたのせいではありません

治療中に食事が楽しめなくなったとき、
「ちゃんと食べられない自分はだめだ」
と思わないでください。
味覚が変わったり、吐き気がしたり、口内炎ができたりするのは、あなたの努力不足ではありません。
その日の体調に合わせて、
「今日はこれなら食べられそう」
「この温度なら大丈夫」
「少しだけなら食べられた」
そんな小さな工夫を重ねていけばいいのです。
そして、食事が楽しめないときには、食事以外の楽しみを見つけてもいい。
治療を受けながらでも、あなたらしい毎日を大切にしてほしいと思います。
治療中も、楽しみまで手放さなくていい。
はんなりは、身体のことだけでなく、
その人がその人らしく過ごせる時間を大切にしています。
治療の中にある「つらさ」だけではなく、
その先にある日々の暮らしにも、そっと寄り添っていきたい。
そんな思いで、女性の身体と心に寄り添っています。
この記事の医学的な参考情報
この記事では、主に国立がん研究センター「がん情報サービス」の「味覚やにおいの変化」「吐き気・嘔吐」「口内炎・口内の乾燥」「がんと食事」などの情報を参考にしています。
※食事の内容や水分・栄養のとり方について、医師から個別の指示を受けている場合は、その指示を優先してください。
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