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乳がんと治療

乳がんの遺伝について知りたい方へ|BRCA遺伝子検査と娘への遺伝、反対側の乳房・卵巣について

乳がんの遺伝について知りたい方へ|BRCA遺伝子検査と娘への遺伝、反対側の乳房・卵巣について

「乳がんは遺伝するのでしょうか?」

乳がんになった方から、そんなご相談を受けることがあります。

特に、

「娘がいるので、娘にも乳がんになりやすい体質が受け継がれているのでは?」

「今は何もない反対側の乳房も、将来がんになるのでは?」

「遺伝子検査を受けたほうがいいのでしょうか?」

と、不安になる方もいらっしゃいます。

乳がんの多くは遺伝によって起こるものではありません。

ただし、一部の乳がんには、生まれつき持っている遺伝子の変化が関係していることがあります。

その代表が、BRCA1・BRCA2という遺伝子です。

今回は、乳がんと遺伝の関係、BRCA遺伝子検査、娘さんへの遺伝、反対側の乳房や卵巣について、そして「アンジェリーナ・ジョリーさんの予防的切除」との関係について、できるだけ分かりやすくお話しします。


乳がんは遺伝するの?

健康について話す母と娘

まず知っておいていただきたいのは、

「乳がんそのものが、そのまま娘に遺伝する」ということではありません。

一部の方では、生まれつき「がんになりやすさ」に関係する遺伝子の変化を持っていることがあります。

その代表がBRCA1・BRCA2です。

BRCA1・BRCA2は、傷ついたDNAを修復する働きに関係する遺伝子です。

この遺伝子に病的な変化があると、乳がんや卵巣がんなどを発症するリスクが高くなることが分かっています。

このような遺伝的背景による乳がん・卵巣がんを、遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)と呼びます。

ただし、

BRCA1・BRCA2に病的な変化がある=必ず乳がんになる

ということではありません。

「なりやすさ」が高くなる、ということです。

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BRCA遺伝子検査では何が分かるの?

BRCA1・BRCA2の遺伝子検査には、今回の乳がんの治療に関係する検査と、生まれつきの遺伝的な体質を調べる検査があります。

特に、娘さんへの遺伝について考える場合に重要なのは、生まれつき持っている遺伝子の変化を調べる「遺伝学的検査」です。

これは、血液などを使って調べることができます。

一方、乳がんの組織を調べる遺伝子検査は、がん細胞に後から生じた変化を調べて、治療薬の選択などに役立てる場合があります。

そのため、

「手術で取った乳がんの組織を調べた結果、BRCAの異常が見つかった」=必ず遺伝している

とは限りません。

がんの組織でBRCAの変化が見つかった場合には、それが生まれつきのものなのかを確認するため、血液などを用いた遺伝学的検査を行うことがあります。

「アメリカに検体を送って検査する」と説明される場合もありますが、検査名と検査の目的を確認することが大切です。

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もしBRCA1・BRCA2に病的な変化があったら?

カウンセリングのイメージ

もし生まれつきBRCA1・BRCA2に病的な変化があることが分かった場合、HBOCの可能性があります。

その場合は、

  • 今後の乳房の検査をどうするか
  • 反対側の乳房のリスクをどう考えるか
  • 卵巣・卵管のリスクをどう考えるか
  • リスクを下げる手術を検討するか
  • 家族への遺伝についてどう考えるか

などを、医療者と一緒に考えていくことになります。

つまり、遺伝子検査は「結果を知って終わり」の検査ではありません。

結果を知ることで、その後の健康管理について考える材料になります。


反対側の乳房も検査してもらえるの?

ここは、乳がんを経験された方にとって気になるところだと思います。

BRCA1・BRCA2に病的な変化がある方は、乳がんを発症していない方だけでなく、すでに片側の乳がんを経験している方でも、反対側の乳房に新たながんが発生するリスクが高くなります。

そのため、HBOCと診断された方では、通常よりも注意深く乳房をみていくことが大切です。

定期的な乳房診察に加えて、マンモグラフィー、超音波、MRIなどを組み合わせた検査が検討されます。国立がん研究センターも、BRCA1・BRCA2に病的な変化がある女性では、乳房MRIを含む強化された検診を勧めています。

ですから、

「反対側の乳房が心配だから、何も分からないまま過ごす」必要はありません。

遺伝的なリスクが分かれば、そのリスクに合わせて検査の方法や頻度を考えていくことができます。


卵巣についても定期的に検査するの?

ここは少し注意が必要です。

BRCA1・BRCA2の病的な変化があると、卵巣がん・卵管がんのリスクも高くなります。

そのため、婦人科で相談しながら経過をみることは大切です。

ただし、乳房とは違って、

「卵巣を定期的に検査していれば、卵巣がんを早期発見できる」

とは、現在の医学では言い切れません。

卵巣がんについては、超音波検査やCA125という血液検査が行われることがありますが、BRCA1・BRCA2に病的な変化がある方に対して、これらの検査で早期発見し、死亡率を下げることが確認された有効な検診方法は確立していません。

そのため、HBOCと分かった場合には、単に「定期検査を受ける」というだけではなく、婦人科や遺伝専門の医療者と、将来のリスクを含めて相談することが大切です。

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保険適用で検査を受けられるの?

BRCA1・BRCA2の遺伝学的検査は、一定の条件を満たしていれば健康保険が適用されます。

また、2020年4月からはHBOCに関係する一部の診療について保険診療が認められ、条件を満たす場合には、リスクを下げるための乳房や卵管・卵巣の手術も保険診療の対象となっています。

ただし、

「乳がんになった人なら誰でもBRCA検査を保険で受けられる」

という意味ではありません。

検査には対象となる条件があります。

気になる方は、主治医に

「私の場合、BRCA1・BRCA2の遺伝学的検査は保険適用になりますか?」

と聞いてみるとよいでしょう。


娘さんにも遺伝するの?

もしお母さんに、生まれつきBRCA1・BRCA2の病的な変化があることが分かった場合、その変化を子どもが受け継ぐ可能性があります。

ここで大切なのは、

遺伝するのは「乳がん」ではなく、「遺伝子の変化」だということ。

そして、その遺伝子の変化を受け継いだからといって、必ず乳がんや卵巣がんになるわけではありません。

ただ、発症するリスクが一般の方より高くなるため、年齢や状況に応じて検査や予防について考えていくことができます。

また、遺伝子検査は家族にも関わる大切な情報です。

検査を受ける前には、遺伝カウンセリングなどを通して、

「検査を受けると何が分かるのか」

「結果が分かったら、自分や家族にどんな意味があるのか」

を十分に理解しておくことが大切です。


アンジェリーナ・ジョリーさんの「予防的切除」とは?

乳房の健康を考える女性

「BRCA遺伝子」と聞くと、アンジェリーナ・ジョリーさんを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

アンジェリーナ・ジョリーさんは2013年、BRCA1の病的な変化があることを知り、将来の乳がんリスクを下げるために両側の乳房切除術を受けたことを公表しました。

このニュースをきっかけに、「予防的乳房切除」という言葉を知った方も多くいらっしゃいます。

医学的には、リスク低減乳房切除術と呼ばれます。

BRCA1・BRCA2などによって乳がんリスクが非常に高い方では、乳房を切除することで乳がんになるリスクを大きく下げることができます。

ただし、

BRCA陽性=必ず予防的に乳房を切除しなければならない

ということではありません。

定期的な検査をより丁寧に行いながら経過をみるという選択肢もあります。

すでに片側の乳がんを経験している方の場合には、反対側の乳房をリスク低減目的で切除することを検討するケースもあります。

一方で、手術には身体的・心理的な負担もあります。

だからこそ、検査結果だけを見てすぐに決めるのではなく、遺伝カウンセリングや乳腺外科などで、自分にとってのメリットとデメリットをよく考えることが大切です。


「知ること」は、すぐに何かを決めることではありません

「遺伝子検査を受けて、もし陽性だったらどうしよう。」

そう思う方もいるかもしれません。

でも、遺伝子検査は、

「あなたは将来こうなります」と未来を決める検査ではありません。

自分がどのようなリスクを持っているのかを知り、

これからどんな検査を受けるのか。

反対側の乳房をどう見ていくのか。

婦人科でどのように相談していくのか。

予防的な手術を選ぶのか、選ばないのか。

そして、娘さんやご家族にどのように伝えるのか。

そうしたことを考えるための情報を得る検査です。


「私のせいで娘に遺伝したら」と思わないでください

乳がんになったあと、

「娘がいるから、遺伝していたらどうしよう」

と、自分を責めるような気持ちになる方もいらっしゃるかもしれません。

でも、遺伝子の変化は、その方が何かをしたから生じたものではありません。

もし遺伝的な要因が見つかったとしても、

「私のせい」ではありません。

むしろ、知ることができたからこそ、

自分自身のこれからの健康管理について考えたり、

家族が必要な情報を得たりすることができます。

遺伝について知ることは、怖いことだけではありません。

「これからどうしていくか」を考えるための一つの情報を得ることでもあります。

一人で抱え込まず、主治医や遺伝カウンセリングを行っている医療機関に相談してみてください。

そして、分からないことや不安なことがあれば、何度でも聞いて大丈夫です。

治療のことだけではなく、これからの暮らしのことも。

はんなりは、そんな不安にもそっと寄り添える場所でありたいと思っています。

乳がん術後の心に寄り添う女性専門サロンはんなり

この記事を読んで覚えておいてほしいこと

乳がんの一部には、遺伝的な要因が関係することがあります。

BRCA1・BRCA2に病的な変化があると、乳がんや卵巣がんなどのリスクが高くなります。

反対側の乳房については、通常より詳しい検査を組み合わせて経過をみることができます。

卵巣については、現在、検査だけで早期発見・死亡率低下を保証できる有効な検診方法は確立していません。

BRCA1・BRCA2の遺伝学的検査は、一定の条件を満たせば保険適用になります。

HBOCと診断された場合、リスク低減手術という選択肢もありますが、必ず手術をしなければならないわけではありません。

そして何より、

「遺伝するかもしれない」と知ったことを、どうか自分を責める理由にしないでください。

知ることで、これからできることがあります。

中野 郁子

この記事を書いた人中野 郁子(なかの いくこ)

乳がん女性の駆け込み寺 はんなりを運営しています。
母をがんで亡くした後、がん患者さんとその家族を支える仕事がしたいと転職。
久留米市の病院に勤務後、2016年に開業しました。
理学療法士、アロマセラピスト、ピンクリボンアドバイザー、乳がん啓発運動指導士の資格があります。

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