球体模様
乳がん治療を知る

乳がんの「標準治療」は普通の治療?|知っておきたい3つの誤解

乳がんの「標準治療」は普通の治療?|知っておきたい3つの誤解

乳がんと診断され、治療について説明を受けるときに耳にする「標準治療」という言葉。

「標準ってことは、普通の治療?」
「もっと良い、特別な治療があるのでは?」
「高いお金を払えば、もっと効果のある治療が受けられる?」

そんなふうに思ったことはありませんか?

実は、「標準治療」という言葉には、誤解されやすいところがあります。

今回は、乳がんの標準治療について、知っておいていただきたい3つのことをお話しします。

誤解① 標準治療は「平均的な治療」?

まず、「標準」という言葉の意味を考えてみましょう。

辞書で調べると、「標準」には大きく分けて2つの意味があります。

① 物事を行う場合のよりどころとなるもの

手本、模範、基準、目安といった意味です。

② 平均的であること。普通。並み。

私たちは普段、「標準サイズ」「標準的な成績」など、②の意味で使うことが多いですね。

そのため、標準治療と聞くと、治療にもランクがあって、真ん中くらいの治療を受けるような印象を持つかもしれません。

でも、医療で使われる「標準治療」は、①の意味に近いのです。

標準治療とは、科学的な根拠(エビデンス)に基づいて、現時点で最も推奨される治療のことです。

多くの研究や臨床試験の結果から、効果や安全性などを検討し、専門家が推奨している治療です。

つまり、標準治療は「真ん中のレベルの治療」ではありません。

治療を選ぶときの、信頼できる基準となる治療なのです。

乳がんの治療について診察室で医師から説明を受ける女性

誤解② 保険診療は「安いから効果もそれなり」?

乳がんの標準治療の多くは、日本の公的医療保険を使って受けることができます。

では、なぜ保険が使えるのでしょうか?

日本では、医薬品などが保険診療で使えるようになるまでに、有効性や安全性について科学的な根拠をもとに審査・評価が行われます。

単に「効果がありそう」という理由だけで、保険適用になるわけではありません。

そして、保険診療の自己負担が比較的少ないのは、治療の価値が低いからではなく、公的な医療保険制度によって医療費の一部が負担されているからです。

例えば、医療費が10万円かかった場合、3割負担の方なら窓口で支払う金額は原則3万円です。

残りの7万円は医療保険から支払われます。

治療そのものが3万円の価値しかない、という意味ではありません。

また、高額療養費制度によって、一定の条件のもとで自己負担を抑えられる仕組みもあります。

保険診療だから効果が低い、ということではないのです。

※標準治療と保険適用は、厳密には別の仕組みです。標準治療のすべてが必ず保険適用になるという意味ではありません。

誤解③ 高額な自由診療のほうが優れている?

インターネットで乳がんについて調べると、さまざまな治療法が紹介されています。

「最先端の治療」
「海外で注目されている治療」
「身体にやさしい新しい治療」

こうした言葉を見ると、気になる方もいらっしゃると思います。

特に、自由診療で高額な費用がかかる治療については、「それだけ高いのだから、きっと効果も高いのだろう」と感じるかもしれません。

でも、治療費の高さと、治療効果の高さは別の話です。

自由診療には、まだ十分な科学的根拠が得られていない治療も含まれています。

もちろん、新しい治療法の研究は大切です。

現在は研究段階にある治療が、臨床試験によって効果や安全性を確認され、将来の標準治療になることもあります。

一方で、期待された効果が確認できず、標準治療にならないものもあります。

大切なのは、その治療が新しいか、高額かということではありません。

自分の乳がんに対して、効果と安全性を裏づける信頼できる科学的根拠があるかどうかです。

なお、保険適用外の治療がすべて効果のない治療というわけではありません。未承認の新薬などを臨床試験や一定の制度のもとで使用する場合もあります。

乳がんの治療について資料を確認しながら情報を整理する女性

乳がんの標準治療は、一人ひとり違います

ここまで、標準治療についての3つの誤解をお話ししました。

もう一つ、知っておいていただきたいことがあります。

それは、標準治療は、すべての乳がん患者さんが同じ治療を受けるという意味ではないことです。

乳がんには、いくつかのタイプがあります。

がんの大きさや広がり、ホルモン受容体やHER2などの性質、身体の状態によって、推奨される治療は異なります。

手術から始める方もいれば、薬物療法を先に行う方もいます。

抗がん剤が必要な方もいれば、必要としない方もいます。

日本では、日本乳癌学会の『乳癌診療ガイドライン』などを参考に、それぞれの病状に応じた治療が検討されます。

また、医学的に推奨される治療があっても、副作用や生活への影響などを考え、ご本人の希望を大切にしながら治療を選ぶことも重要です。

「標準」という言葉に惑わされないで

乳がんと診断されたとき、少しでも良い治療を受けたいと思うのは自然なことです。

自分のために、家族のために、できる限りのことをしたい。

そう思って、たくさんの情報を調べる方もいらっしゃるでしょう。

でも、「標準治療」という言葉を聞いて、もっと上の治療を探さなければ、と焦る必要はありません。

標準治療は、決して「そこそこの治療」ではないのです。

長年の研究と、多くの患者さんの治療から積み重ねられた科学的な根拠をもとに、現時点で最も推奨されている治療です。

もちろん、標準治療だから必ず治るという意味ではありませんし、どの治療にも効果と副作用があります。

だからこそ、わからないことや不安なことは、遠慮せずに主治医に尋ねていただきたいと思います。

乳がんと診断されたとき、誰に相談したらよいのかわからず、戸惑うこともあると思います。

そんなときに頼れる人や相談先について、こちらの記事でもご紹介しています。

▶ 関連記事:乳がんになったとき、誰を頼ればいい?

最後に、もう一度。

「標準」は、平均点という意味ではありません。

「保険診療」は、安いから効果が低いわけではありません。

「自由診療」は、高額だから優れているわけではありません。

この3つを知っているだけでも、治療についての情報を受け取るときの見方が変わるのではないでしょうか。

正しい知識が、納得できる治療を選ぶための助けになればと思います。


参考情報

  • 国立がん研究センター がん情報サービス「標準治療と診療ガイドライン」
  • 日本乳癌学会「乳癌診療ガイドライン」
  • 厚生労働省「医療保険制度」「高額療養費制度」

※この記事は一般的な医療情報をお伝えするものです。治療の効果や適応は病状によって異なります。実際の治療については主治医にご相談ください。

あわせて読みたい

▶抗がん剤って、実際どのくらいつらい?|副作用を和らげる薬もあります

▶ 再発したら、もう終わり?|乳がん再発後の治療と希望

はんなりについて

リラクゼーションサロンはんなりは、女性専用・完全予約制の個室サロンです。

乳がんの治療中・治療後の方にも、安心して過ごしていただける場所を目指しています。

施術を担当するのは、病院で乳がん術後のリハビリに携わってきた女性理学療法士です。

肩や腕のつっぱり、身体の疲れやむくみなど、その日の状態を伺いながら施術内容を調整します。

「まずは話を聞いてほしい」
「こんな状態でも受けられるのかな」

そんなご相談からでも大丈夫です。

西鉄久留米駅から徒歩約3分。
ご予約は下記の予約ページから承っています。

▶ 初めての方へ|はんなりでは、どんな時間を過ごすの?

▶ ご予約はこちら

中野 郁子

この記事を書いた人中野 郁子(なかの いくこ)

乳がん女性の駆け込み寺 はんなりを運営しています。
母をがんで亡くした後、がん患者さんとその家族を支える仕事がしたいと転職。
久留米市の病院に勤務後、2016年に開業しました。
理学療法士、アロマセラピスト、ピンクリボンアドバイザー、乳がん啓発運動指導士の資格があります。

よく読まれている記事

ご予約・お問い合わせ

お申し込みのほか、ご質問やご要望などありましたら、
お気軽にお問い合わせください。

お客様の使いやすい方法を
ご選択ください。

Web予約

からだのケア
24時間以内に返信いたします

Web予約

こころのケア
営業時間 10:00~18:00