「天職」という言葉があります。
英語では calling と表現されることがあります。
callは「呼ぶ」という意味。
callingには、神様から呼ばれる、使命を与えられるという宗教的な背景があります。
私はキリスト教徒ではありませんが、初めてこの言葉の意味を知ったとき、はっとしました。
天職とは、自分がやりたい仕事を見つけることだけではなく、誰かに呼ばれて、その仕事にたどり着くことでもあるのかもしれない。
そう思うと、これまでの自分の歩みが、少し違って見えたのです。
以来、callingは私の大好きな言葉になりました。
私を呼んでくださるのは、神様ではなく、お客様なのかもしれません。
夢も、なりたい職業も、特になかった私
実は私は、子どもの頃から医療職に憧れていたわけでも、強い夢を持って社会に出たわけでもありません。
大学を卒業するときも、特別にやりたい仕事や、なりたい職業があったわけではありませんでした。
「ちょっとやってみたいな」と思う仕事はありましたが、時代は就職氷河期。
特に当時、地方に暮らす女性にとって、職業選択の幅は決して広いものではありませんでした。
希望だけで仕事を選べる状況でもなく、偶然や成り行き、時には消去法で進む道を決めてきました。
転職も経験しました。
そのため、若い頃から一つの仕事を選び、ずっと続けている人に対して、どこかコンプレックスがありました。
自分には、これといった一貫性がないのではないか。
何か一つのことを、長く続けてきたと言える人が、少し羨ましかったのです。
病院でずっと働くつもりだった
理学療法士として病院に勤務し始めたとき、仕事は大変でしたが、やりがいも感じていました。
患者さんの身体に触れ、動きを確認し、回復の過程に関わる。
簡単なことばかりではありませんでしたが、専門職として働けることに充実感がありました。
私は、そのままずっと病院に勤めるつもりでした。
自分でサロンを開業するなんて、当時は思ってもみませんでした。
ところが、病院で働くうちに、少しずつ気になることが出てきました。
病院には病院の役割があり、限られた時間や制度の中で提供できることがあります。
一方で、治療が終わったあとも、身体の不調や不安を抱えながら生活している女性がいます。
医療としてのリハビリテーションが一区切りついても、その方の人生や暮らしは続いていきます。
その先にも、誰かが関われる場所があっていいのではないか。
病院ではできないことがある。
でも、私にはできることがある。
そう考えるようになりました。
やりたいから、というより必要だと思ったから
サロンを始めた理由を聞かれることがあります。
もちろん、自分の意思で決めたことです。
でも、夢だったから、どうしても開業したかったから、という感覚とは少し違います。
「必要としている人がいるのなら、やった方がいいのではないか」
「誰かがやらないといけないのなら、私がやってもいいのではないか」
そんな気持ちに近かったと思います。
特別な使命感があったわけでも、自分にしかできないと思っていたわけでもありません。
ただ、理学療法士として経験してきたことを、病院の外でも役立てられるのではないか。
乳がんの手術や治療を経験した女性が、安心して身体を預けられる場所をつくれないだろうか。
その思いが、2016年の「はんなり」の開業につながりました。
天職だから、大変ではないわけではない

サロンを続けるのは、楽しいことばかりではありません。
施術だけをしていればよいわけではなく、経営も事務も広報も、基本的には自分でやらなければなりません。
思うようにいかない日もあります。
この仕事が大好きで、毎日が幸せで仕方がない。
……と言い切れるほど、私は夢見がちな人間でもありません(笑)。
それでも、お客様が来てくださる。
身体が少し楽になったと喜んでくださったり、次の予約を楽しみにしてくださったり。
久しぶりにお顔を見せてくださる方もいます。
そんな一つひとつの出来事が、また仕事を続ける理由になっています。
10年という時間が、少し変えてくれたこと
2026年、はんなりは開業10年目を迎えました。
振り返ってみると、人生というのは分からないものですね。
長く一つの仕事を続けている人を羨ましく思っていた私が、自分のサロンを10年続けているのですから。
10年続けたから偉いわけでも、過去の選択がすべて正解だったわけでもありません。
それでも、この10年という時間が、かつて抱えていたコンプレックスを少し軽くしてくれたように思います。
遠回りをしてきたと思っていた道も、今の私につながっていたのかもしれません。
天職は、最初から決まっているものではないのかもしれない
私は「天職を探して」ここまで来たわけではありません。
夢も目標もはっきりしないまま社会に出て、迷ったり、仕事を変えたり、その時々で選択を重ねてきました。
でも、最初から進む道が決まっていなくても、よかったのかもしれません。
やってみて初めて分かることもあれば、経験を重ねたからこそ見えてくるものもあります。
天職とは、最初から出会うものではなく、続けていくうちに、あとからそう呼べるようになるものなのかもしれません。
自分がやりたいことと、誰かに必要とされること。
その二つが、いつも一致するとは限りません。
でも、重なる場所が見つかったとき、仕事にはまた違った意味が生まれるような気がします。
私はキリスト教徒ではありませんので、神様から呼ばれているかどうかは分かりません。
けれど、お客様が「はんなりに行こう」と思い出してくださる。
私を頼って、足を運んでくださる。
その呼び声があるうちは、もう少し頑張ってみたいと思っています。
私にとってのcallingは、きっとそこにあるのでしょう。
リラクゼーションサロンはんなり
オーナー・理学療法士 中野郁子
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はんなりについて
リラクゼーションサロンはんなりは、女性専用・完全予約制の個室サロンです。
乳がんの治療中・治療後の方にも、安心して過ごしていただける場所を目指しています。
施術を担当するのは、病院で乳がん術後のリハビリに携わってきた女性理学療法士です。
肩や腕のつっぱり、身体の疲れやむくみなど、その日の状態を伺いながら施術内容を調整します。
「まずは話を聞いてほしい」
「こんな状態でも受けられるのかな」
そんなご相談からでも大丈夫です。
西鉄久留米駅から徒歩約3分。
ご予約は下記の予約ページから承っています。
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