球体模様
乳がんと暮らし・仕事

乳がんになったとき、誰に頼ればいい?

乳がんになったとき、一人暮らしで困ること

乳がんと診断されたとき。

治療のことだけでも頭がいっぱいなのに、

「手術のとき、誰に付き添ってもらおう」
「入院の保証人はどうしよう」
「退院してから、一人で生活できるかな」
「仕事はどうしたらいい?」
「治療費も心配……」

そんなふうに、治療以外のことが次々と気になってくることがあります。

特に、ひとり暮らしの方や、子どもがいない方、家族が遠方にいる方。

あるいは、家族はいても、病気のことを頼るのが難しい方。

乳がんになったとき、

「誰から支援を受ければいいのだろう?」

と戸惑うことがあるかもしれません。

でも、支えてくれるのは家族だけではありません。

医療や福祉の専門職、地域のサービス、職場、友人、患者会など。

いくつもの支援を組み合わせながら、治療と生活を続けていくことができます。

今回は、乳がんの治療の流れに沿って、どんな支援があるのかを一緒に見ていきましょう。


手術前――家族がいない場合、誰に相談すればいい?

乳がんの治療が始まると、まず気になるのが手術や入院のこと。

病院によっては、入院時に緊急連絡先や身元引受、費用の支払いなどに関する書類の提出を求められることがあります。

「家族がいないから、手術を受けられないのでは?」

と心配になる方もいるかもしれません。

けれど、家族がいないことと、医療を受けられないことは別の問題です。

病院によって対応や必要な手続きが異なるため、

「自分の場合は、何を準備すればいいですか?」

と、早めに病院へ確認しておくことが大切です。

困ったときには、看護師さんや病院の相談窓口に相談してみましょう。


入院――手術の付き添いや緊急連絡先はどうする?

手術の日。

「誰かに付き添ってもらわなければいけないのかな」

と不安になることもあるでしょう。

家族が近くにいない場合、友人やパートナーなど、信頼できる人に協力をお願いする方法もあります。

ただ、どうしても頼れる人がいない場合もあります。

そんなときは、

「一人で手術を受けることになりそうです」

と、病院に伝えてみてください。

必要な支援について、一緒に考えてもらえる場合があります。

大切なのは、

困ってからではなく、困りそうな時点で相談すること。

です。


退院後――一人暮らしの家事や買い物はどうする?

手術が終わり、退院できることになった。

それは嬉しいことですが、

「家に帰ったら、全部自分でやらなくちゃ」

と思ってしまう方もいるかもしれません。

料理、洗濯、掃除、買い物。

重い荷物を持ったり、高いところに手を伸ばしたりすることがつらい時期もあります。

一人暮らしなら、

「ちょっと買い物をお願いする」

ということさえ難しいかもしれません。

でも、退院後の生活を支える方法は、家族だけではありません。

利用できる制度や地域のサービスについて、病院の相談員や自治体の窓口などに相談できる場合があります。

「退院してから、一人で生活するのが少し心配です」

この一言から相談を始めてみましょう。


通院――一人で治療を続けるときの支援

乳がんの治療は、手術をしたら終わりではありません。

放射線治療や薬物療法など、その後も長く通院が続くことがあります。

治療内容によっては、何度も病院へ通うことになります。

「今日は一人で大丈夫かな」

「副作用が強かったらどうしよう」

と不安になることもあるでしょう。

毎回誰かに付き添ってもらう必要はありません。

でも、

「今日は一緒に来てほしい」

と思ったときには、友人や家族などに頼ってもいい。

そして、どうしても付き添いが難しい場合は、医療機関に相談してみる。

一人でできることと、誰かの力を借りること。

その両方があっていいのです。


乳がん治療と仕事――働き続けるための支援

働いている方にとっては、治療と仕事の両立も大きな課題です。

手術や治療のために休む。

通院のために勤務時間を調整する。

体調によっては、これまでと同じ働き方が難しくなることもあります。

「職場に病気のことをどこまで伝えればいい?」

「休職したら収入はどうなる?」

「治療をしながら働き続けられる?」

そんな悩みも、一人で抱え込まなくて大丈夫です。

病院のがん相談支援センターなどでは、仕事に関する相談につながることがあります。

職場の制度を確認したり、必要に応じて専門家につないでもらったりすることもできます。


乳がんの治療費――利用できる制度を相談する

乳がんの治療では、医療費だけでなく、通院の交通費や仕事を休むことによる収入の減少など、生活全体に関わるお金の心配が出てくることがあります。

「いったいいくらかかるんだろう」

「このまま働けなかったらどうしよう」

と不安になるのは自然なことです。

医療費については、高額療養費制度など、負担を軽くするための制度があります。

また、仕事を休んだときの収入を支える制度など、状況によって利用できる制度があります。

ただし、

誰でも同じ制度が使えるわけではありません。

働き方や加入している健康保険、収入、治療の状況などによって異なります。

だからこそ、

「お金のことが心配です」

と、病院の相談窓口で伝えてみてください。

制度を自分だけで探し続けなくてもいいのです。


乳がん治療中の心の支え――一人で抱え込まないために

そして、もう一つ大切なのが心の支えです。

一人暮らしだからといって、必ず孤独とは限りません。

反対に、家族と暮らしていても、

「病気のことを話せる人がいない」

と感じることもあります。

乳がんと診断されたときの不安。

治療への迷い。

治療が終わった後の不安。

再発への心配。

体の変化。

仕事やこれからの生活のこと。

こうした気持ちを、誰かに話してみるだけで少し楽になることがあります。

医療者に相談する。

患者会に参加してみる。

同じ経験をした人の話を聞く。

友人に気持ちを話してみる。

カウンセリングなどの支援につながる。

どれが正解ということではありません。

自分が安心して話せる場所を、一つでも持っておくこと。

それが大切なのだと思います。


がん相談支援センターとは?

ここまで読んで、

「いろいろな支援があることはわかったけれど、結局どこに相談したらいいの?」

と思われた方もいるかもしれません。

そんなときに知っておいてほしいのが、

「がん相談支援センター」

です。

がん相談支援センターは、がんの治療や生活について、さまざまな相談ができる窓口です。

医療費や仕事のこと。

退院後の生活。

利用できる制度。

家族との関係。

治療に対する不安。

「何を相談したらいいのかもわからない」という段階でも大丈夫です。

必要に応じて、医療ソーシャルワーカー(MSW)などの専門職につないでもらえることもあります。


MSW(医療ソーシャルワーカー)に相談できること

MSWは、病気になったことで生じる生活上の困りごとについて、一緒に考えてくれる専門職です。

たとえば、

「一人で退院するのが心配」

「治療費が心配」

「仕事を続けられるかわからない」

「家族に頼ることができない」

「退院後の生活をどうしたらいい?」

そんな相談もできます。

「こんなことを相談していいのかな」

と思わなくて大丈夫。

むしろ、

困りごとが大きくなる前に相談すること

が大切です。

病院に相談窓口がある場合は、

「MSWさんに相談したいのですが」

と伝えてみてもいいでしょう。


家族だけに頼らず、支援を組み合わせる

乳がんになったとき、

「家族がいない私はどうすればいいんだろう」

と不安になるかもしれません。

でも、支援は家族だけではありません。

医師、看護師、MSW。

がん相談支援センター。

職場。

自治体。

介護や福祉のサービス。

友人や知人。

患者会やピアサポート。

そして、必要なときには専門家。

一人の人が全部を支える必要はないのです。

いくつもの手を借りながら、自分の生活を守っていく。

それでいいのだと思います。


「誰に頼ればいいかわからない」から相談していい

病気になったとき、

「誰かに迷惑をかけたくない」

「これくらい自分で何とかしなくちゃ」

と思ってしまうことがあります。

でも、治療を受けながら生活していくことは、それだけで十分頑張っていること。

困ったときに人の手を借りることは、弱さではありません。

そして、

「誰に相談したらいいかわからない」

ということ自体が、立派な相談の理由です。

もし今、乳がんの治療や生活のことで困っているなら、

まずは主治医や看護師さんに話してみる。

病院のがん相談支援センターを訪ねてみる。

「生活のことで相談したい」と伝えてみる。

そこから、必要な支援につながっていくことがあります。

家族だけに頼らなくてもいい。

一人ですべてを抱えなくてもいい。

あなたの治療と、その先の暮らしを支える人は、家族以外にもいます。

はんなりも、そんな「誰かに話してみたい」と思ったときに、そっと立ち寄れる場所の一つでありたいと思っています。

治療が終わったあとも、

一人じゃない。

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中野 郁子

この記事を書いた人中野 郁子(なかの いくこ)

乳がん女性の駆け込み寺 はんなりを運営しています。
母をがんで亡くした後、がん患者さんとその家族を支える仕事がしたいと転職。
久留米市の病院に勤務後、2016年に開業しました。
理学療法士、アロマセラピスト、ピンクリボンアドバイザー、乳がん啓発運動指導士の資格があります。

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