乳がんの治療が始まると、乳腺外科での診察や検査に意識が向きます。
「次の乳腺外科はいつだろう」
「ホルモン治療はいつまで続くのかな」
そんなふうに、乳がんのことを中心に考える日々になるのも自然なことです。
でも、ホルモン治療を続けている間に、もうひとつ覚えておいてほしいことがあります。
それは、婦人科のこと。
特に、乳がんのホルモン療法で「タモキシフェン」を服用している方は、子宮に起こる変化について知っておくことが大切です。
「タモキシフェンを飲んでいるから、子宮体がんになる」
という意味ではありません。
治療を怖がるためではなく、自分の身体の変化に気づくための知識として知っておきましょう。
タモキシフェンってどんな薬?

乳がんには、女性ホルモンであるエストロゲンの刺激によって増殖するタイプがあります。
このような乳がんでは、エストロゲンの働きを抑える「ホルモン療法」が再発予防などの目的で行われます。
その薬のひとつがタモキシフェンです。
タモキシフェンは、乳房ではエストロゲンの働きを抑える一方で、子宮内膜に対してはエストロゲンに似た作用を示すことがあります。
そのため、子宮内膜が厚くなったり、子宮内膜ポリープや子宮内膜増殖症などがみられたりすることがあります。
そして、タモキシフェンを使用している女性では、子宮内膜がん(子宮体がん)のリスクが一般の人より高くなることが知られています。ACOGでは、子宮内膜がんの相対リスクはおおむね2~3倍とされています。
ただし、
「タモキシフェンを飲んでいる=子宮体がんになる」
ということではありません。
乳がんの再発を防ぐための大切な治療ですから、自己判断で薬を中止することはしないでください。
大切なのは、リスクを知って、必要なときに婦人科へ相談することです。
ホルモン療法は長く続く治療です。薬の種類によって、身体に現れる変化や注意点も異なります。
▶ あわせて読みたい
乳がんのホルモン療法で骨が弱くなる?|骨粗鬆症を防ぐために知っておきたいこと
子宮頸がんと子宮体がんは、同じ「子宮のがん」でも違います

ここは少し分かりにくいところです。
子宮は大きく、
- 腟に近い「子宮頸部」
- その奥にある「子宮体部」
に分けられます。
子宮頸部にできるのが子宮頸がん。
子宮体部の内側にある子宮内膜から発生することが多いのが子宮体がんです。
名前は似ていますが、できる場所も、原因や検査方法も異なります。
子宮頸がん検診は「子宮の入り口」を調べる検査
一般的に「子宮がん検診」と呼ばれているものは、主に子宮頸がん検診を指します。
子宮頸部の細胞をブラシなどで採取し、異常な細胞がないかを調べます。
現在は自治体によって、従来の細胞診に加えてHPV検査単独法が選択される場合もあります。
子宮頸がんは、症状がない段階でも検診によって前がん病変や早期のがんを発見できることが知られています。
だから、乳がんの治療中であっても、対象年齢や自治体のルールに沿って子宮頸がん検診を受けることは大切です。
子宮体がんは「定期検診を受ければ安心」とは限りません
一方、子宮体がんについては少し事情が違います。
現在、症状のない女性を対象にした子宮体がんの有効な定期検診は確立していません。
日本婦人科腫瘍学会も、子宮体がんについては検診としての有効性が証明されていないとしています。
そのため、
「タモキシフェンを飲んでいるから、毎年必ず子宮体がん検査を受けなければならない」
と一律に考えるのは正確ではありません。
では、何を大切にすればいいのでしょう?
それは、
「症状を見逃さないこと」
です。
こんな症状があったら、婦人科へ

子宮体がんで最も多い症状は、不正な性器出血です。
たとえば、
- 生理ではない時期に出血する
- 生理のような出血がいつもと違う
- 閉経したのに出血がある
- 少量の出血が何度もある
- 血の混じったおりものがある
- 茶色のおりものが続く
などです。
特に、閉経後の出血は少量でも婦人科で相談することが大切です。
子宮体がんでは、はっきりした「出血」ではなく、血が混ざって茶色く見えるおりものだけの場合もあります。
「これくらいなら大丈夫かな」
と自己判断せず、
「ちょっと気になる」くらいで婦人科に相談して大丈夫です。
不正出血がある場合は、次の定期検診を待たずに婦人科へ相談しましょう。
タモキシフェンを飲んでいる人は、症状があったら早めに相談
タモキシフェンを服用している人に対しては、異常な性器出血、血の混じったおりもの、 spotting(少量の出血)などがあれば評価することが推奨されています。
一方で、症状がまったくない人に対して、経腟超音波や子宮内膜の検査を定期的に行うことが、子宮体がんの早期発見につながるという十分な根拠はありません。
つまり、
「定期的に検査を受け続ける」よりも、「変化があったときに受診する」ことが重要
という考え方です。
もちろん、婦人科医があなたの年齢、閉経状況、既往歴、タモキシフェンの使用状況などから検査が必要と判断した場合は、その指示に従ってください。
婦人科ではどんな検査をするの?
症状がある場合には、婦人科で状態に応じた検査が行われます。
代表的なものとして、
経腟超音波検査
腟から超音波を使って子宮や卵巣を確認します。
子宮内膜の厚さなどを見ることができます。
ただし、超音波だけで子宮体がんを確定することはできません。特に初期のがんでは見つけにくい場合もあります。
子宮内膜細胞診
子宮の内側にある子宮内膜から細胞を採取して調べます。
子宮内膜組織診
必要に応じて子宮内膜の組織を採取し、顕微鏡で詳しく調べます。
検査内容は、症状や年齢、閉経状況などによって変わります。
「子宮体がんの検査を受けたい」と婦人科を受診すれば、必要な検査を医師が判断してくれます。
ホルモン治療中だからこそ、自分の身体の変化を大切に
乳がんのホルモン療法は、何年も続くことがあります。
その間、
「薬を飲むことが当たり前になった」
「多少の体調変化ならホルモン剤のせいかなと思ってしまう」
ということもあるかもしれません。
ホルモン療法では、ほてりや発汗など、更年期に似た症状が現れることもあります。
▶ あわせて読みたい
夏のホットフラッシュがつらいあなたへ|乳がん術後のホルモン治療と副作用との付き合い方
でも、
「いつものこと」と思っていた出血が、実は婦人科で確認したほうがよい症状だった
ということもあります。
だからこそ、
乳腺外科では乳がんのことを。
婦人科では子宮や卵巣のことを。
それぞれの専門家に相談していけばいいのです。
婦人科に行くことも、自分を大切にすること
乳がんになったあと、
「また何か見つかったら怖い」
「婦人科まで受診するのは気が重い」
そんな気持ちになる方もいると思います。
検査を受けることは、病気を探し続けるためではありません。
自分の身体を知り、必要なときに必要な治療につなげるため。
そのためのものです。
そして、タモキシフェンには乳がんの再発を防ぐ大切な役割があります。
「子宮体がんが心配だから薬をやめよう」
ではなく、
「この薬を続けながら、どんな変化に気をつければいいのかを知っておこう」
という考え方で大丈夫です。
最後に
乳がんの治療が長くなると、どうしても「乳がん」に意識が集中します。
でも、治療を受けながら過ごしているのは、乳房だけではなく、ひとりの身体です。
婦人科の検診を受けること。
生理や出血の変化に気づくこと。
「ちょっと気になる」をそのままにしないこと。
それも、治療を続けながら自分の身体を大切にする方法のひとつです。
治療のことだけでなく、あなた自身の身体にも目を向けてあげてくださいね。
※この記事は、乳がんのホルモン療法と子宮体がんについて一般的な情報をまとめたものです。検査の必要性や頻度は、使用している薬、年齢、閉経状況、既往歴などによって異なります。気になる症状がある場合は、主治医または婦人科へご相談ください。
参考資料: 日本婦人科腫瘍学会|子宮がん検診について
合わせて読みたい
- 乳がんのホルモン療法で骨が弱くなる?|骨粗鬆症を防ぐために知っておきたいこと
- 乳がん治療中の体重増加で悩んでいませんか?
- 夏のホットフラッシュがつらいあなたへ|乳がん術後のホルモン治療と副作用との付き合い方
- 眠れない夜を、一人で抱え込まないで
はんなりについて
リラクゼーションサロンはんなりは、女性専用・完全予約制の個室サロンです。
乳がんの治療中・治療後の方にも、安心して過ごしていただける場所を目指しています。
施術を担当するのは、病院で乳がん術後のリハビリに携わってきた女性理学療法士です。
肩や腕のつっぱり、身体の疲れやむくみなど、その日の状態を伺いながら施術内容を調整します。
「まずは話を聞いてほしい」
「こんな状態でも受けられるのかな」
そんなご相談からでも大丈夫です。
西鉄久留米駅から徒歩約3分。
ご予約は下記の予約ページから承っています。
▶ ご予約はこちら

前の記事