私たちは、知らないうちに
「これは当たり前」と思い込んでいることがあります。
でも、その「当たり前」は、本当にいつでも、どこでも当たり前なのでしょうか。
医療の世界にも、時代とともに変わってきたことがたくさんあります。
昔は、がんと診断されたことを本人に伝えないことが珍しくなかった時代がありました。
乳がんの手術後に、乳房を再建するという選択肢も、今ほど身近ではありませんでした。
そして、もっと昔にさかのぼれば、現在のような麻酔による手術が一般的ではなかった時代もあります。
「当たり前」は、ずっと同じではないのです。
がん治療も、少しずつ変わっています

たとえば、
「がんの治療は、長く入院するもの」
「がんになったら、仕事を辞めなければならない」
「がんになると、どんどん痩せていく」
そんなイメージを持っている方もいるかもしれません。
もちろん、治療内容や病状によっては入院が必要なこともあります。
仕事を続けることが難しい場合もあります。
体重が減ることもあります。
でも、すべての人に当てはまるわけではありません。
治療を受けながら仕事を続ける人。
外来で治療を受け、普段の生活を続ける人。
治療をしながら、自分らしい時間を大切にする人。
がん治療のあり方は、一人ひとり違います。
「がんになったら、こうなる」
と一括りにはできない時代になってきました。
「常識」を疑うことは、否定することではない
ここでいう「疑う」は、
「今までの医療は間違っていた」
という意味ではありません。
その時代、その場所、その人にとって最善だったものが、研究や技術の進歩、社会の変化によって変わっていく。
私は、そんなふうに考えています。
だから、
「本当にそうなのかな?」
と一度立ち止まってみることは、とても大切なのではないでしょうか。
私が「当たり前」を考えるとき
私自身、「これは当たり前なのかな?」と考えるときがあります。
そんなときに、よく考えるのが、
「国が違ったらどうだろう?」
そして、
「30年後だったら、どうだろう?」
ということ。
国が変われば、医療の仕組みも違います。
時代が変われば、治療の選択肢や考え方も変わります。
そう考えると、
「今の私が知っていることだけが、すべてではない」
と気づかされます。
少し視野が広がるような気がするのです。
あなたの「当たり前」は、本当にあなたが選んだもの?
乳がんの治療中や治療後には、
「みんなこうしているから」
「これが普通だから」
「病気になったんだから仕方ない」
と、自分の気持ちを置き去りにしてしまうことがあります。
でも、
「本当に私は、そうしたいのかな?」
と考えてみてもいい。
もちろん、治療には医学的に必要なことがあります。
何でも自分の好きなようにできるわけではありません。
だからこそ、医療者と相談しながら、
「自分にとって大切なことは何か」
「どんなふうに過ごしたいのか」
を考えていくことも大切なのだと思います。
「当たり前」を少しだけ疑ってみる。
それは、医療を否定することではなく、
自分の人生を、自分の目で見直してみることなのかもしれません。
今はまだ「当たり前」ではないことが、
30年後には当たり前になっているかもしれない。
そして、今は当たり前だと思っていることが、
未来には変わっているかもしれない。
そう思うと、少しだけ肩の力が抜けませんか。
「こうでなければならない」ではなく、
「ほかの選択肢もあるかもしれない」。
そんな視点を持ちながら、
治療のことも、その先の人生のことも、
一緒に考えていけたらと思っています。
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