触れることは、痛みや心にも届いている
赤ちゃんを抱っこしたとき。
小さな背中をゆっくり撫でていると、
赤ちゃんだけでなく、抱いている自分までなんだか落ち着いてくる。
そんな経験はありませんか?

子どもが泣いているときに背中をさする。
「大丈夫だよ」と手を握る。
痛いところに、そっと手を当てる。
私たちは昔から、言葉だけではなく、触れることでも人を安心させてきました。
実は、この「触れる」という行為には、身体だけではなく、心や痛みとの関係でも興味深い研究があります。
乳がん術後のケアを行っている「はんなり」でも、私はこのタッチングをとても大切にしています。
この「タッチングと痛み」の関係について、少しお話ししたいと思います。
タッチングと痛みには、どんな関係があるの?
たとえば、転んで膝をぶつけたとき。
思わず手を当てたり、さすったりしませんか?
子どもが「痛い」と言ったときも、
「痛かったね」
と言いながら、背中をさすったりします。
もちろん、触れるだけで傷や病気が治るわけではありません。
でも、やさしい触れ方が痛みの感じ方に影響する可能性については、研究が行われています。
健康な人を対象とした研究では、ゆっくりとした心地よいタッチによって、痛みの感じ方が弱まる方向の反応が報告されています。
つまり、
「触れること」と「痛み」は、まったく別々のものではない
ということです。
痛いときに「手を当てる」には、意味があるのかもしれません
日本語には「手当て」という言葉があります。
文字どおり、
手を当てること。
昔から私たちは、痛いところに手を当てたり、さすったりしてきました。

「そんなことで痛みが変わるの?」
と思うかもしれません。
もちろん、強い痛みや病気そのものをタッチだけで治療できるわけではありません。
でも、痛みは単純に「身体の傷」だけで決まるものではありません。
不安や緊張、恐怖、睡眠不足、ストレスなども、痛みの感じ方に影響します。
だからこそ、
「安心できる触れ方」
が、痛みを感じている人にとって意味を持つことがあります。
痛みは我慢するものではありません。痛みが長引くことによる身体や心への影響については、こちらの記事でもお話ししています。
触れることは、心にも届く
誰かにやさしく背中をさすってもらう。
手を握ってもらう。
肩にそっと手を置いてもらう。
そんなとき、
「大丈夫」
と言われなくても、なんとなく安心することがあります。
触れることは、言葉を使わないコミュニケーションにもなります。
「ここにいるよ」
「あなたを大切に思っているよ」
そんな気持ちが、触れることを通して伝わることもあるのです。
人との触れ合いと安心感や社会的なつながりについては、オキシトシンなどとの関連も研究されています。
ただし、
「触れば必ずオキシトシンが増える」
「オキシトシンが増えるから幸せになる」
と単純に説明できるほど、身体の仕組みは簡単ではありません。
大切なのは、その人が心地よいと感じられることなのだと思います。
だから「どんな触れ方でもいい」わけではありません
触れることが大切だからといって、
強く揉めばいい。
痛いくらい押せばいい。
というわけではありません。
むしろ、心地よいタッチでは、
速さ・圧・温度
などが大切だと考えられています。
ゆっくりとした、やさしい触れ方。
温かい手。
安心できる場所。
そして、何より、
「その人が心地よいと思えること」
です。
人によって、好きな触れ方は違います。
その日の体調によっても違います。
だから私は、施術のときも「正しい触り方」を押しつけるのではなく、その方の身体の反応を見ながら触れることを大切にしています。
乳がん術後は「触られるのが怖い」こともあります
乳がんの手術を経験すると、
「手術したところは触らないほうがいいのかな」
「脇が怖い」
「腕を触られると違和感がある」
「以前とは自分の身体が違う気がする」
そんな感覚を持つ方もいます。
だからこそ、乳がん術後のケアでは、
「触れること」だけでなく「どう触れるか」
が大切です。
痛くない。
怖くない。
嫌ではない。
そして、
「なんだか気持ちいい」
「ほっとする」
そう感じられること。
はんなりでは、そんなタッチを大切にしています。
乳がん術後の身体は、痛みやつっぱり、動かしにくさなどが重なることもあります。身体の状態に合わせたケアについては、こちらもご覧ください。
→ 乳がん手術後、腕が上がりにくいのはなぜ?|痛み・つっぱり・動かす不安について
「C触覚線維」という神経があります
ここで少し医学的なお話です。
私たちの皮膚には、さまざまな感覚を受け取る神経があります。
その中でも「触れることの心地よさ」と関連して注目されているのが、
C-tactile afferents(C触覚線維)
です。
C触覚線維は、主に毛のある皮膚に存在し、ゆっくりとした、やさしくなでるような刺激に反応します。

そして、その情報は脳へ伝わり、単なる「触られた」という感覚だけでなく、
「心地よい」
という感情とも関係しています。
こうした研究からも、皮膚と脳は密接につながっていることがわかります。
「皮膚は第2の脳」という言葉は医学的な正式名称ではありません。
でも、皮膚が外からの刺激を受け取り、それが神経を通して脳に伝わることを考えると、なかなか興味深い表現だと思いませんか?
自分で自分に触れることも、ひとつのセルフケア
誰かに触れてもらうだけではありません。
自分で腕を包むように触れてみる。
肩に手を置いてみる。
お風呂上がりに、ゆっくりクリームを塗る。
手のひらで、自分の身体を感じてみる。
そんな時間も、自分の身体に意識を向けるセルフケアのひとつになります。

「今日は肩が硬いな」
「ここは少し違和感があるな」
「今日はいつもより疲れているな」
そんな身体からの小さなサインにも気づきやすくなります。
もちろん、セルフタッチが他者からのタッチとまったく同じ作用をする、とまでは言えません。
でも、
自分の身体にやさしく触れる。
それだけでも、
「この身体を大切にしよう」
という気持ちにつながるかもしれません。
はんなりが「触れること」を大切にする理由
私は理学療法士として、これまでたくさんの方の身体に触れてきました。
筋肉の硬さ。
関節の動き。
皮膚の状態。
左右の違い。
そして、その方が「ここは触られたくない」と感じる場所。
身体に触れることで、言葉だけではわからないことに気づくことがあります。
でも、私がタッチを大切にしている理由は、それだけではありません。
直接、人の肌に触れるということには、
「あなたの身体を大切に扱っています」
というメッセージも含まれていると思うからです。
乳がんの治療を経験した身体は、以前とは違うかもしれません。
傷あとがあるかもしれない。
感覚が変わっているかもしれない。
むくみが気になるかもしれない。
触れることが怖くなっているかもしれない。
だからこそ、無理に変えようとするのではなく、
今の身体を、まずやさしく知る。
そんな時間を大切にしたいと思っています。
AIが身近になった今だからこそ、実際に身体を見て、触れて、動きを確かめることの意味についても書いています。
→ AI時代だからこそ、「触れること」を大切にしたい|乳がん術後の身体と向き合うために
触れることは、身体だけではなく心にも届く
「皮膚は第2の脳」
これは医学的な正式名称ではありません。
でも、皮膚と脳がつながり、触れることが安心感や心地よさ、さらには痛みの感じ方とも関係していることを知ると、
私たちの身体は、思っている以上に「触れること」を感じ取っている
のだと気づかされます。
タッチングと痛みの関係を知ると、やさしく触れることの大切さが見えてきます。
赤ちゃんを抱きしめるように。
大切な人の背中をさするように。
痛いところに、そっと手を当てるように。
そして、自分自身にも。
今日一日頑張った身体に、
「お疲れさま」
と触れてあげる。
それも、自分をいたわるひとつの方法なのかもしれません。
はんなりでは、
「ゆるめる、うごかす」だけではなく、
「大切に触れる」ことも大切にしています。
治療が終わったあとも、
自分の身体を大切にできるように。
その身体と、これからも一緒に暮らしていけるように。
そんなお手伝いができたらと思っています。
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はんなりについて
リラクゼーションサロンはんなりは、女性専用・完全予約制の個室サロンです。
乳がんの治療中・治療後の方にも、安心して過ごしていただける場所を目指しています。
施術を担当するのは、病院で乳がん術後のリハビリに携わってきた女性理学療法士です。
肩や腕のつっぱり、身体の疲れやむくみなど、その日の状態を伺いながら施術内容を調整します。
「まずは話を聞いてほしい」
「こんな状態でも受けられるのかな」
そんなご相談からでも大丈夫です。
西鉄久留米駅から徒歩約3分。
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