球体模様
乳がん術後の身体

乳がん術後、腕は上げる?リンパ浮腫とむくみの考え方

乳がん術後、腕は上げる?リンパ浮腫とむくみの考え方

乳がんの手術を受けたあと、

「腕は高くしておいたほうがいいですか?」

「寝るときもクッションで腕を上げています」

という方がいらっしゃいます。

術後すぐは、腕のむくみが気になったり、病院で「腕を上げて休みましょう」と言われたりして、退院してからもずっと続けている方もいるでしょう。

もちろん、腕を少し高くして休むことには意味があります。

でも、退院後も一日中、腕を高くしておかなければならないわけではありません。

ここでは、そもそも「むくみ」にはどんな種類があるのか、そして術後の腕の挙上にはどんな意味があるのかを、できるだけわかりやすくお話しします。

そもそも「むくみ=リンパ浮腫」ではありません

腕がむくむと、

「リンパ浮腫になったのかな?」

と心配になる方も多いと思います。

でも、むくみにはいくつかの原因があります。

代表的なのが、

静脈性のむくみとリンパ性のむくみです。

静脈性のむくみとは?

静脈は、体の各部分から血液を心臓へ戻す役割をしています。

腕を長時間下げていると、重力の影響もあり、腕から心臓へ血液が戻りにくくなることがあります。

すると、

腕に血液が滞りやすくなる
↓
血管の中の圧が高くなる
↓
組織に水分が出やすくなる
↓
むくみにつながる

ということがあります。

リンパ性のむくみとは?

一方、リンパ系は、組織に出てきた水分やタンパク質などを回収して運ぶ重要な役割をしています。

リンパの流れが十分に保てなくなると、組織に水分やタンパク質などが残りやすくなります。

乳がん治療後では、

・リンパ節郭清
・放射線治療
・手術によるリンパ系への影響

などがリンパ浮腫のリスクに関係します。

つまり、

静脈の流れが関係するむくみと、リンパの流れが関係するむくみは、同じ「むくみ」でも仕組みが違います。

そして実際には、両方が関係していることもあります。

リンパ浮腫のリスクについては、こちらの記事でも詳しく書いています。

→ リンパ浮腫を「正しく恐れる」ということ|乳がん術後に知っておきたいリスクと向き合い方

では、なぜ術後に「腕を上げる」の?

ここで「腕の挙上」が出てきます。

腕を心臓より少し高い位置に置くと、重力の影響を受けにくくなり、静脈の血液や組織液が戻ることを助けることがあります。

そのため、術後に腕が腫れているときなど、

「クッションなどを使って腕を少し高くして休みましょう」

と説明されることがあります。

また、腕を無理のない範囲で動かすことも、循環を助ける大切な方法です。

つまり、

腕を上げることは、むくみを楽にするための一つの方法

と考えるとよいでしょう。

でも「腕を上げていればリンパ浮腫を予防できる」わけではありません

ここは、とても大切です。

腕を高くしておけばリンパ浮腫にならない、ということではありません。

リンパ浮腫は、リンパ系の流れに関係する複雑な状態です。

また、慢性化すると組織そのものにも変化が起こります。

そのため、

「リンパ浮腫が心配だから、ずっと腕を高くしておこう」

と考える必要はありません。

退院後は「ずっと腕を上げておく」必要はありません

術後の早い時期には、腫れや痛み、創部の状態などを考えて、腕を楽な位置に置いて休むことが役立つ場合があります。

でも、退院して日常生活に戻ってからは、

「腕を下げてはいけない」

と神経質になる必要はありません。

私が大切だと思うのは、

一日の中で、同じ姿勢をずっと続けないこと。

です。

例えば、

・長時間、腕を下げっぱなしにしない
・ときどき肩や肘、手を動かす
・深呼吸をする
・同じ姿勢を続けない
・疲れたら腕を楽な位置で休ませる

など。

「ずっと上げる」よりも、

動かす、休ませる、また動かす。

そんな生活のほうが、ずっと現実的です。

乳がん術後のリハビリについての考え方は、こちらの記事をご覧ください。

→ 乳がん術後のリハビリで大切なのは「ゆるめる」こと、そして「うごかす」こと

「寝るときは腕を上げています」という方へ

就寝時にクッションで腕を軽く支えて休む女性

退院してからも、

「毎晩クッションを入れて腕を高くして寝ています」

という方がいます。

それで楽に眠れるのであれば、無理にやめる必要はありません。

ただ、

「乳がんの手術をしたから、何年経っても腕を高くして寝なければならない」

という決まりがあるわけではありません。

クッションを入れていて楽なら使う。

特に必要性を感じなければ、普通に楽な姿勢で眠る。

それで大丈夫です。

むしろ、クッションの高さや姿勢が気になって眠れなくなったり、肩や首が痛くなったりするのであれば、本末転倒です。

むくみは「夜だけ」ではなく、一日全体で考える

乳がん術後にデスクワークの合間に腕を動かす女性

例えば、

朝は腕がすっきりしている。

でも、

日中ずっと腕を下げて仕事をする
↓
夕方になると腕が重く感じる
↓
帰宅して休む
↓
腕を少し高くすると楽になる

ということがあります。

この場合、

「夜に腕を上げればいい」

だけではなく、

日中に長時間同じ姿勢を続けないこと

も大切です。

短い時間でもいいので、時々姿勢を変えたり、無理のない範囲で腕を動かしたりする。

そして疲れたら休む。

そんなふうに、一日の流れ全体で考えてみましょう。

「腕を下げたらリンパ浮腫になる」は違います

リンパ浮腫が心配になると、

「腕を下げていたら悪くなるのでは?」

「荷物を持ったらいけない?」

「腕を使わないほうがいい?」

と、どんどん生活が制限されてしまうことがあります。

でも、腕を普通に下げて生活すること自体が悪いわけではありません。

大切なのは、自分の身体の状態を見ながら、

無理をしすぎないこと。
でも、必要以上に怖がらないこと。

です。

「上げる」より「うまく使う」

ソファに座って肩甲骨を無理なく動かす女性

術後の腕にとって大切なのは、

ずっと高くしておくことではなく、適度に動かし、休ませ、日常生活の中で少しずつ使っていくこと。

腕を下げることも、腕を動かすことも、日常生活には必要です。

だから、

「腕を下げてしまった……」

「今日はクッションで上げて寝なかった……」

と、自分を責めなくて大丈夫です。

むくみは、そんなに単純なものではありません。

静脈もリンパも、そして筋肉や呼吸、姿勢など、いろいろな要素が関係しています。

最後に

乳がんの手術を受けたあとは、身体のことが気になって、これまで何気なくしていたことまで「これはしていいのかな?」と考えてしまうことがあります。

でも、退院後の生活は、「何をしてはいけないか」ばかりを考える生活ではなく、自分の身体と相談しながら少しずつ日常を取り戻していく時間でもあります。

腕を上げて休むことも、その一つ。

腕を下げて生活することも、その一つ。

腕を動かすことも、その一つです。

「ずっと上げておかなければ」ではなく、
「楽なときは休ませて、必要なときは動かす」。

そんなふうに、もう少し肩の力を抜いて考えてみてもいいのではないでしょうか。

もし術後の腕の腫れが続く、左右差が気になる、皮膚が硬くなってきた、腕が重い・張るなどの変化がある場合は、自己判断で様子をみ続けず、主治医やリンパ浮腫について相談できる医療機関・専門職に相談してください。

はんなりでは、乳がん治療後の身体の変化についても、一緒に考えていきます。

治療が終わったあとも、一人じゃない。

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はんなりについて

リラクゼーションサロンはんなりは、女性専用・完全予約制の個室サロンです。

乳がんの治療中・治療後の方にも、安心して過ごしていただける場所を目指しています。

施術を担当するのは、病院で乳がん術後のリハビリに携わってきた女性理学療法士です。

肩や腕のつっぱり、身体の疲れやむくみなど、その日の状態を伺いながら施術内容を調整します。

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「こんな状態でも受けられるのかな」

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中野 郁子

この記事を書いた人中野 郁子(なかの いくこ)

乳がん女性の駆け込み寺 はんなりを運営しています。
母をがんで亡くした後、がん患者さんとその家族を支える仕事がしたいと転職。
久留米市の病院に勤務後、2016年に開業しました。
理学療法士、アロマセラピスト、ピンクリボンアドバイザー、乳がん啓発運動指導士の資格があります。

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