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乳がんと心・生活

病気になったときこそ知ってほしい「レジリエンス」という力

病気になったときこそ知ってほしい「レジリエンス」という力

病気がわかったとき。

これからの治療のこと、仕事のこと、家族のこと、これからの人生のこと。

いろいろな不安が一度に押し寄せてきて、

「私はちゃんと乗り越えられるだろうか」

と思うことがあるかもしれません。

そんなときに知っておいてほしい言葉があります。

それが、「レジリエンス(resilience)」です。

日本語では「精神的回復力」「心の回復力」などと訳されます。

でも、レジリエンスは、

「どんなことがあってもへこたれない強い心」

という意味ではありません。

むしろ、

つらいことがあれば落ち込んでもいい。
不安になってもいい。
それでも、時間をかけながら少しずつ自分を取り戻していく力。

そんなふうに考えると、わかりやすいかもしれません。

レジリエンスは「折れない心」ではありません

窓辺で静かに過ごす女性。病気になったときの心の揺れとレジリエンスを表すイメージ

病気になると、心が揺れるのは自然なことです。

乳がんと診断されたとき、

「どうして私が?」

「これからどうなるの?」

「再発したらどうしよう」

「仕事は続けられるかな」

「家族に心配をかけたくない」

そんな気持ちになることがあります。

治療が始まってからも、

副作用がつらい日。

検査結果を待つ日。

治療が終わったあとに、ふと不安になる日。

いろいろな場面で心は揺れます。

だから、

「私は前向きになれない」

「もっと強くならなければ」

と思わなくて大丈夫です。

落ち込まないことがレジリエンスではありません。

落ち込んだあとに、誰かに話をしたり、休んだり、考え方を少し変えてみたりしながら、また自分の生活に戻っていく。

その過程そのものが、レジリエンスなのです。

病気になって、周囲の人と自分を比べてしまうこともあるかもしれません。そんなときは、こちらの記事も読んでみてください。

▶ 「どうして私だけ…」と思ったときに|乳がん治療中、人と比べてしまうあなたへ

病気とレジリエンスには、どんな関係があるのでしょう?

レジリエンスは、がんなどの大きな病気を経験した人が、その後の生活に適応していくうえでも重要な心理的な要素のひとつと考えられています。

がん患者を対象にした研究では、レジリエンスは社会的な支援、希望、対処方法、生活の質などと関連することが報告されています。

また、レジリエンスを高めることを目的とした心理的な介入についても研究されており、認知的なアプローチ、ポジティブ心理学、社会的支援などがレジリエンスの向上に役立つ可能性が示されています。

ここで大切なのは、

「レジリエンスが高ければ、病気にならない」

という意味ではないことです。

乳がんをはじめとする病気の発症そのものを、レジリエンスだけで防げるわけではありません。

また、レジリエンスが高ければ、うつ病や不安障害にならないということでもありません。

病気や治療によって心身に大きな負担がかかれば、誰でも精神的につらくなる可能性があります。

だからこそ、

「つらくならないため」ではなく、「つらくなったときに回復していくための力」

としてレジリエンスを考えることが大切なのだと思います。

レジリエンスは「生まれつきの性格」ではありません

「私はもともと弱い性格だから……」

そう思う方もいるかもしれません。

でも、レジリエンスは固定された性格のようなものではありません。

病気を経験した人のレジリエンスについて調べた研究では、社会的な支援や、困難への対処方法、希望などが関連することが報告されています。

つまり、

ひとりで頑張って身につけるものではない

ということです。

誰かに話を聞いてもらう。

医療者に不安を相談する。

同じ経験をした人と話す。

しっかり眠る。

身体を少し動かす。

「今日はここまで」と休む。

そんな小さなことも、自分を立て直すための力になります。

レジリエンスを育てるためにできること

①「0か100か」で考えない

病気になると、

「元気にならなければ」

「以前の生活に戻らなければ」

と考えてしまうことがあります。

でも、治療中は、

「今日は10分歩けた」

「今日はよく眠れた」

「今日は誰かに話を聞いてもらえた」

それだけでも十分です。

100点を目指さなくていい。

昨日より少し楽だったことに目を向ける。

それも心の回復につながります。

② 気持ちを無理に前向きにしない

「前向きに考えよう」

と言われると、かえって苦しくなることがあります。

不安なときは、

「私は今、不安なんだな」

と、その気持ちをそのまま認めることも大切です。

感情をなくそうとするのではなく、

「今、自分はこう感じている」

と気づく。

そこから少し距離をとって、自分を眺めてみる。

深呼吸やマインドフルネスなども、そのための方法のひとつです。

がん患者を対象とした研究でも、マインドフルネスなどの心理的介入は、不安や抑うつなどの心理的負担を軽減する可能性が報告されています。

まだ起きていない未来への不安に、心がいっぱいになってしまうこともあります。今できることに目を向ける考え方について、こちらでもお話ししています。

▶ まだ起きていないことまで、今日悩まなくていい|取り越し苦労との付き合い方

③ ひとりで抱え込まない

カフェで穏やかに会話する女性たち。レジリエンスを支える人とのつながり

レジリエンスというと、

「自分自身の力」

というイメージがあるかもしれません。

でも実際には、人とのつながりも大きな支えになります。

家族。

友人。

主治医。

看護師。

医療ソーシャルワーカー。

心理士。

同じ病気を経験した人。

誰かに話すことで、頭の中でぐるぐるしていた不安が整理されることがあります。

「こんなことを相談していいのかな」

と思うことほど、話してみてください。

社会的支援は、がん患者のレジリエンスや病気への適応と関連する重要な要素のひとつです。

いつも家族や周囲を支えてきた人ほど、自分がケアを受ける側になることに戸惑う場合があります。

▶ ケアされることに戸惑ってしまうあなたへ|乳がんになって変わった家族との関係

④ 身体を整える

明るい室内で肩や腕をゆっくり動かす女性。心身の回復を支える無理のない運動

心と身体は別々ではありません。

眠れない。

食欲がない。

ずっと緊張している。

身体が動かない。

そんな状態が続けば、心も疲れてしまいます。

だからこそ、

よく眠ること。

食べられるものを食べること。

無理のない範囲で身体を動かすこと。

休むこと。

これらも「心を強くするため」ではなく、

心が回復できる土台をつくるため

に大切です。

心が疲れているときは、身体も緊張していることがあります。痛みや不調を我慢せず、自分の身体をいたわることも大切です。

▶ 痛みは我慢しないで|乳がん術後の身体と向き合うために

⑤ 「できなくなったこと」だけを見ない

病気になると、

「以前はできていたのに」

と思うことが増えるかもしれません。

でも、できなくなったことばかりを数えると、自分の変化がすべて悪いものに見えてしまいます。

「今できること」

にも目を向けてみてください。

朝起きられた。

病院に行けた。

家族と話せた。

少し散歩できた。

笑うことができた。

何もしないで休めた。

どれも立派なことです。

レジリエンスは「頑張る力」ではなく「戻っていく力」

ここが、私が一番お伝えしたいところです。

レジリエンスという言葉を聞くと、

「もっと強くならなければ」

「前向きにならなければ」

と感じる方もいるかもしれません。

でも、そうではありません。

レジリエンスは、頑張り続ける力ではなく、休みながら、助けてもらいながら、自分のペースで回復していく力です。

泣いてもいい。

不安になってもいい。

立ち止まってもいい。

誰かに頼ってもいい。

そして、また少し動き出せばいい。

がん患者のレジリエンスについての研究でも、対処方法、社会的支援、成長など、さまざまな要素がレジリエンスと関連していることが示されています。

病気になったあなたに、もともと備わっているもの

病気になったあと、

「自分は弱くなった」

と感じることがあるかもしれません。

でも、本当にそうでしょうか。

治療を受ける。

副作用と付き合う。

検査を受ける。

不安な結果を待つ。

それでも朝を迎える。

そんな日々を一日ずつ過ごしてきたこと自体が、すでに大きな力です。

レジリエンスは、何か特別な人だけが持っている能力ではありません。

誰の中にも、揺れながら回復していく力があります。

そして、その力はひとりで育てなくてもいいのです。

人に支えてもらいながら。

身体をいたわりながら。

ときには立ち止まりながら。

少しずつ、自分のペースを取り戻していけばいい。

「元の自分」に戻らなくてもいい

桜並木を自分のペースで歩く女性の後ろ姿。病気を経験したあとの新しい一歩

病気を経験すると、

「病気になる前の自分に戻りたい」

と思うことがあります。

もちろん、以前の生活を取り戻すことも大切です。

でも、必ずしも「元の自分」に戻らなくてもいいのかもしれません。

病気を経験したからこそ、

自分の身体の声に耳を傾けるようになった。

無理をしなくなった。

人に頼れるようになった。

家族との時間を大切にするようになった。

小さな幸せに気づくようになった。

そんな変化もあります。

レジリエンスの研究では、困難への適応だけでなく、経験を通じた「成長」という側面も扱われています。

もちろん、病気を経験したからといって、必ず人として成長しなければならないわけではありません。

ただ、

「病気になった自分」も、自分の人生の一部として、少しずつ受け入れていく。

それもまた、回復のひとつの形なのだと思います。

心がつらいときは、専門家に頼っていい

レジリエンスを育てることは大切ですが、

「レジリエンスを高めれば、つらさを自分で解決できる」

ということではありません。

眠れない日が続く。

食事がとれない。

何をしても気持ちが晴れない。

強い不安が続く。

何もする気になれない。

日常生活に支障が出ている。

そんなときは、我慢せず主治医や看護師などの医療者に相談してください。

必要であれば、心療内科や精神科、心理職などにつないでもらうこともできます。

助けを求めることも、レジリエンスのひとつです。

おわりに

病気になると、心は揺れます。

それは弱さではありません。

大きな出来事を経験した人として、とても自然な反応です。

大切なのは、

「私は強くならなければ」

ではなく、

「揺れても、また少しずつ戻っていけばいい」

と思えること。

そして、そのために誰かの力を借りてもいいということ。

レジリエンスは、ひとりで頑張るための力ではありません。

人とのつながりや、身体をいたわること、自分の気持ちに気づくこと。

そうした小さな積み重ねの中で、少しずつ育っていく「回復する力」なのだと思います。

はんなりも、そんなあなたの「戻っていく時間」に、そっと寄り添える場所でありたいと思っています。

治療が終わったあとも、一人じゃない。

そんな気持ちを忘れずに。

はんなりについて

リラクゼーションサロンはんなりは、女性専用・完全予約制の個室サロンです。

乳がんの治療中・治療後の方にも、安心して過ごしていただける場所を目指しています。

施術を担当するのは、病院で乳がん術後のリハビリに携わってきた女性理学療法士です。

肩や腕のつっぱり、身体の疲れやむくみなど、その日の状態を伺いながら施術内容を調整します。

「まずは話を聞いてほしい」
「こんな状態でも受けられるのかな」

そんなご相談からでも大丈夫です。

西鉄久留米駅から徒歩約3分。
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中野 郁子

この記事を書いた人中野 郁子(なかの いくこ)

乳がん女性の駆け込み寺 はんなりを運営しています。
母をがんで亡くした後、がん患者さんとその家族を支える仕事がしたいと転職。
久留米市の病院に勤務後、2016年に開業しました。
理学療法士、アロマセラピスト、ピンクリボンアドバイザー、乳がん啓発運動指導士の資格があります。

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